リスティング広告の入札とは、広告がクリックされた時に支払う料金(クリック単価)の上限を決める設定のことです。設定金額を入札単価と呼びます。リスティング広告はクリック単価が高すぎると採算が合わなくなってしまいますので、とても重要な設定です。

入札設定の方法は大きく自動と手動の2つがあり、現在の主流は自動入札戦略です。ただ自動の場合、入札価格を決められません。システムが自動で設定をします。手動入札を導入すれば、入札価格は自由に決められます。

Googleは自動を推奨しており、これまで1,000アカウント以上の運用してきた私の経験からも、基本は自動入札での運用をおすすめします。しかし状況によっては手動のほうが成果が出る場合もあるため、状況に応じて選択すべきです。

このページではリスティング広告の入札の概念や仕組みを説明しつつ、おすすめの入札戦略を紹介します。入札単価の決め方や、手動と自動入札の使い分け・効果的な運用方法も解説しますので、ご覧いただければ入札で悩むことはなくなるはずです。

中小企業のお客様を中心に、1,000アカウント・300業種以上運用した上でのノウハウを凝縮していますので、ぜひ参考にしてみてください。

1. リスティング広告の入札の概念と掲載されるまでの仕組み

リスティング広告の仕組み

まずはリスティング広告の入札の概念を広告が掲載されるまでの仕組みと合わせて簡単に説明します。結論、広告掲載は以下の流れで行われ、2の工程が入札に該当します。

【リスティング広告掲載までの仕組み】

  1. 広告表示するキーワードを登録する
  2. 上限クリック単価を設定するここが入札
  3. キーワードに反応する語句でユーザーが検索
  4. 広告がオークションにかけられる
  5. 一定の広告ランク以上の広告が掲載される

リスティング広告は競合広告主とのオークションによってクリック単価や掲載順位が決まります。オークションは広告枠に掲載する広告を決める段階で行われ、ユーザーが検索する度に実施されます。

上記のクリック単価や広告掲載順位が決まる目安になるのが入札単価であり、クリック単価の上限を設定することを入札を呼びます。勘違いされやすいですが、入札単価だけでは広告掲載順位は決まりません。広告ランクで決まります。決まるまでの詳細が気になる方は下記記事をご覧ください。

広告ランクとは?仕組みや上げ方を300社以上運用してきた代表が解説

2. 自動入札戦略の特徴

広告出稿の目的に合わせて、効果を最大化するための入札価格の設定を「入札戦略」と呼びます。入札戦略はキャンペーン単位で指定可能です。

入札戦略には大きく自動入札と手動入札があり、Googleをはじめとした媒体社は自動入札を推奨しています。そのためまず、自動入札が推奨されている理由を説明します。

基本は自動入札を使うべきだと私も考えていますが、状況によっては手動を採用した方がよいケースもあります。判断するには自動入札の特徴を理解しておく必要があるので、見ていきましょう。

自動入札戦略はスマート自動入札と通常の自動入札の2つが存在する

自動入札は、コンバージョン数や値を重視するスマート自動入札と、通常の自動入札が存在します。

自動入札戦略の種類機能種類
スマート自動入札コンバージョンに基づいて入札価格を決定・コンバージョン数の最大化
・目標コンバージョン単価
・コンバージョン値の最大化
・目標広告費用対効果
通常の自動入札統計情報に基づいて入札価格を決定・クリック数の最大化
・目標インプレッションシェア

現場では一括りにされることが多いですが、媒体ヘルプだと区別して紹介されているため、違いを覚えておきましょう。このページは便宜上、基本同一とみなして説明をしていきます。

2-1. ユーザーの様々なシグナルを元に入札を自動調整できる

一番の特徴は、様々なシグナル(ユーザーの検索意図を特定できる属性)を元に入札を自動調整できることです。具体的には以下のような情報と配信データを加味して、コンバージョンに至る確率が高いと考えられるユーザーの入札価格を引き上げてくれます。

シグナル説明
オーディエンスユーザーの性別・年齢
デバイスユーザーの使用デバイス
地域・所在地配信エリア設定・ユーザーの所在地
地域に関する意図配信エリアに関する意図
*対象外地域でも配信エリアに関心があるか
曜日と時間帯検索する曜日と時間
リマーケティングリストリスト内外かどうか
リストに登録されてからの経過時間
表示言語ユーザーのブラウザ言語設定
ブラウザユーザーが使用しているブラウザ
OSユーザーが使用しているオペレーティング システム
実際の検索語句キーワードではなく検索語句も考慮
検索ネットワークパートナー広告掲載される検索パートナーサイト
※検索キャンペーンに使われるシグナルのみ抜粋
参照:Google広告ヘルプ スマート自動入札について入札単価調整について

例えば、名古屋市でパソコンを使って、金曜日の14時にWindows OSにてGoogle Chrome ブラウザを用いて、「リスティング広告 名古屋」と検索するユーザーからコンバージョンが多く取れている配信実績がある場合、このシグナルに合致するユーザーに対しては入札価格を強く引き上げるようになるイメージです。

自動入札を導入することで上記のようなシグナルを元に、コンバージョンに繋がりやすいユーザーに対して広告を上部表示し、クリックを促せます。

ちなみに地域に関する意図、表示言語、ブラウザ、OS,実際の検索意図、検索ネットワークパートナーに対しては、手動入札では入札の強弱がつけられません。

2-2. 入札調整の手間がかからない

手動入札でも任意のキーワードやデバイス、所在地等に応じて入札価格の強弱はつけられます。しかしシグナルは多岐に渡るため、全ての実績を考慮して設定するのは不可能に近いです。

その点自動入札の場合は、システムが配信実績を元に自動で入札価格を設定するため、調整する手間がかかりません。キーワードの入札価格だけでなく、デバイス、エリアなども自動調整してくれます。

よってコンバージョン数の増加にも繋がるだけでなく、日々のメンテナンス時間の短縮に繋がるメリットがあります。

特にキーワードの登録数が多いアカウントだと、日々手動で入札価格を調整するのは大変ですので、非常に助かります。

次からはデメリットについて説明します。

2-3. 学習データが少ないと最適な入札調整がされない場合がある

学習データが少ない場合は最適な入札調整がされづらいです。そのため配信開始直後など、データ不足の状態で利用すると成果悪化に繋がるリスクがあります。

例えばコンバージョン数の最大化の入札戦略であれば、基本コンバージョンに繋がった実績を元に入札価格の強弱をつけます。ですのでコンバージョンが少ない中で導入すると、入札強化対象のキーワードや時間帯の判断が上手くいかず、コンバージョン単価の高騰に繋がることもあります。

参考までにGoogle広告では、月間のコンバージョン数が30件以上がスマート自動入札戦略の推奨基準となっています。そのためあくまで目安ですが、月間30件未満であれば個別クリック単価の導入を検討したほうがよいでしょう。

スマート自動入札の対象 Google広告ヘルプ

しかし「コンバージョンデータが少ない、あるいはまったくない状態でもクエリ(検索語句)レベルで、コンバージョン率を推定し、最適な入札単価を設定する」ともGoogle広告ヘルプに記載がありますので、公式見解としては「いつ導入してもOK」というのが回答です。わかりづらいですね…。

Google広告ヘルプ:Google の入札アルゴリズムによる学習の仕組み

しかし私が1,000アカウント以上運用してきた経験上、コンバージョンが取れてきてからスマート自動入札を入れたほうが、コンバージョン率が高くなることが多い感覚があります。

ですので私は、アカウントにデータがない配信開始直後は手動入札戦略を導入して、一定の(月間30件以上等)コンバージョンが取れた段階で自動入札戦略に切り替えることが多いです。まずはコンバージョン率が高いと想定できるキーワードの入札を手動で強化しています。

運用者によって意見が分かれるところですが、導入時期で迷う場合はぜひ参考にしてみてください。

2-4. 学習期間中はパフォーマンスが安定しづらい

自動入札戦略を導入すると、キャンペーンのステータスが一時的に「入札戦略学習中」になります。ステータスが学習中の間は、コンバージョン単価が高騰するなどパフォーマンスが安定しづらいです。ステータスにカーソルを合わせると学習の目安日数が表示されますので、この期間は成果が悪化する可能性があることを理解しておきましょう。

ちなみにキャプチャの学習期間は5日と表示されていますが、実際は2日で学習が完了しました。このように早く終わる場合もありますし、反対に長引くこともあります。コンバージョンの獲得ペースによって変動します。

3. リスティング広告の入札戦略の種類

ここからは入札戦略の種類とそれぞれの使うべき状況を説明します。媒体のヘルプページを元にただ説明するのではなく、1,000アカウント以上運用してきた経験も踏まえつつご紹介します。

自動入札戦略は複数の種類がありますので、重視する指標に合ったものを選びましょう。手動は個別クリック単価の1つのみです。

色々ありますが、私は個別クリック単価か目標コンバージョン単価を利用することが多いです。使いやすくおすすめです。

入札戦略機能メリット重視する指標媒体ヘルプページ
個別クリック単価(おすすめ)上限クリック単価を自由に設定するクリック単価の上げ下げが自在にできるクリック単価
コンバージョン単価
Google広告
Yahoo!広告
目標コンバージョン単価(おすすめ)目標コンバージョン単価内でコンバージョン数を最大化するよう入札単価を自動設定する入札価格を自動で設定しつつ、コンバージョン単価抑制に繋げるコンバージョン単価
コンバージョン数
Google広告
Yahoo!広告
コンバージョン数の最大化予算を消化しつつ最大限のコンバージョンが得られるよう、入札単価を自動設定するコンバージョン数の最大化に近づけるコンバージョン数Google広告
Yahoo!広告
クリック数の最大化予算内でなるべく多くのクリック数を獲得できるように入札単価を自動設定するクリック数の最大化に繋げるクリック数Google広告
Yahoo!広告
目標広告費用対効果目標の広告費用対効果(≒ROAS)の達成を目指せる入札単価を自動設定する目標の広告費用対効果に近づけるROASGoogle広告
Yahoo!広告
コンバージョン値の最大化予算を消化しつつコンバージョン値(≒売上)を最大化できるように、入札単価を自動設定するコンバージョン値の最大化に繋げるコンバージョン値Google広告
Yahoo!広告
目標インプレッションシェア検索結果の最上部、上部、または任意の場所に広告が表示されるように、入札単価を自動設定する広告の100%表示を目標に配信できるインプレッション数Google広告
Yahoo!広告
※キャンペーン単位でどれを採用するか決めましょう
※一部Google広告とYahoo!広告で名称が異なるものがありますが、役割は一緒です

では1つずつ説明します。

2-1. 個別クリック単価

入札戦略名機能メリット重視する指標媒体ヘルプページ
個別クリック単価上限クリック単価を自由に設定するクリック単価の上げ下げが自在にできるクリック単価
コンバージョン単価
Google広告
Yahoo!広告

入札価格(上限クリック単価)を自由に設定できる手動入札戦略です。広告グループもしくはキーワード単位で入札価格を設定できます。

①メリット

クリック単価の上げ下げが自在にできます。クリック単価をほぼ確実に抑えられることが一番のメリットだと感じます。自動入札だとクリック単価が高くなり、コンバージョン単価が高騰してしまうことがありますが、この事象を防げます。

自動入札でも多少の制限は可能ですが、厳密な入札価格設定は基本できません。

コンバージョン率の高いキーワードの入札価格を引き上げ、反対に低めのキーワードは下げ目に設定することがポイントです。

②重視する指標及び活用おすすめシーン

クリック単価及びコンバージョン単価を重視する且つ、以下の条件のどれかに当てはまるようであれば活用を推奨します。

  • クリック単価を大きく下げる必要がある
  • アカウントにコンバージョンデータが少ない配信直後(目安1ヶ月程度)
  • 月間コンバージョン数が30件未満

ケースバイケースなので、一概には言えませんが参考にしてみてください。私はクリック単価を大きく下げる必要のある小額予算で運用する際によく使います。

③注意点

■入札調整の手間がかかる

2章で説明した通り、キーワード単位で入札価格の調整が必要なので手間がかかります。デバイスやエリア、オーディエンスなどの入札調整も細かくするとなるとかなり大変です。

■拡張クリック単価の提供終了に伴い、入札価格に完全に基づいた広告配信がされるようになった

Google広告では2024年10月から拡張クリック単価が使用できなくなりました。よって設定した入札価格に完全に基づいた広告配信がされますので注意が必要です。コンバージョン率を考慮して厳密な入札価格をする必要があります。

拡張クリック単価とは、ユーザーのコンバージョンする可能性に応じて、入札単価を自動で調整する機能です。手動で価格を決めつつ自動でも調整してくれる、かゆいところに手が届く設定だったのですが、現在は使用していたキャンペーンを除き、適用できなくなりました。個人的に結構なデメリットだと感じます。

2025年1月時点ではYahoo!広告はまだ使用できますが、近いうちに使えなくなる可能性があります。そのため大きな問題がなければ自動入札戦略に切り替えることを推奨します。

詳細は「拡張クリック単価(eCPC)について」のGoogle広告ヘルプをご覧ください。

2-2. 目標コンバージョン単価

入札戦略機能メリット重視する指標媒体ヘルプページ
目標コンバージョン単価目標コンバージョン単価内でコンバージョン数を最大化するよう入札単価を自動設定する入札価格を自動で設定しつつ、コンバージョン単価抑制に繋げるコンバージョン単価
コンバージョン数
Google広告
Yahoo!広告

目標のコンバージョン単価を設定し、その単価内でコンバージョン数を最大化するように入札価格を調整する自動入札戦略です。キャンペーンもしくは広告グループ単位で目標コンバージョン単価を設定できます。

後で説明するコンバージョン数の最大化に目標コンバージョン単価を設定したものになりますので、厳密に言うと、この入札戦略の1種です。

私イチオシの使いやすい入札戦略ですので、迷ったら利用してみてください。

①メリット

入札価格を自動で設定しつつ、コンバージョン単価抑制に繋げられます。

個別クリック単価だとキーワードを中心とした複数のシグナル単位で入札調整する必要があり大変ですが、この手間がなくなります。

また目標コンバージョン単価に応じて入札の強弱がつき、クリック単価も変動します。目標コンバージョン単価を下げればクリック単価も下がる傾向があるため、抑制したい場合は値を下げましょう。

②重視する指標及び活用おすすめシーン

コンバージョン単価及びコンバージョン数を重視する且つ、Google広告ヘルプに記載のある月間コンバージョン数が30件以上であれば活用を推奨します。※月間30件以下でも上手く機能することもあるため、あくまで目安です

入札価格の強弱がつけやすい戦略ですが、システム判断によってはクリック単価が引き上げられる場合もあります。確実に大きく下げる必要がある際は個別クリック単価を推奨します。

③注意点

■目標コンバージョン単価の大きな変更は機械学習の妨げになる恐れがあるので極力控える

目標コンバージョン単価を設定した後に値を変更する際は、半減する等の大きな変更は極力控えること推奨します。Yahoo!広告の情報ですが、目標コンバージョン単価は約20%の範囲内で調整してくださいと記載があります。

Yahoo!広告. 入札戦略「コンバージョン数の最大化 (目標値あり)」【運用型】設定後の調整について

理由は言及されていませんが、大きく単価を変えると機械学習の妨げになる可能性があるからだと感じます。Google広告は情報がありませんが、CPA抑制が急務でなければ原則20%の範囲で調整をするのが安心でしょう。(例. 目標コンバージョン単価が5,000円であれば、+- 1,000円までの変更に留める)

2-3. コンバージョン数の最大化

入札戦略機能メリット重視する指標媒体ヘルプページ
コンバージョン数の最大化予算を消化しつつ最大限のコンバージョンが得られるよう、入札単価を自動設定するコンバージョン数の最大化に近づけるコンバージョン数Google広告
Yahoo!広告

最大限のコンバージョンが得られるよう入札価格を調整する自動入札戦略です。目標コンバージョン単価を設定すると目標コンバージョン単価の入札戦略になりますが、設定しないとコンバージョン数の最大化になります。

名前だけ見るとコンバージョン数最大化に貢献するメリットしかないような入札戦略ですが、ヘルプでも言及されている通りキャンペーンの日予算を使い切ることを目標に入札調整されるので、クリック単価が高騰し、CPAが上がる恐れがあります。そのためCPAよりもCV数を重視する場合に使用するようにしてください。

Google広告ヘルプ 「コンバージョン数の最大化」による入札について

CPAを意識して運用することが多いはずですので、基本は目標コンバージョン単価を使うことをおすすめします。

①メリット

コンバージョン数の最大化に近づける入札調整を自動でしてくれる点です。CPA度外視で、予算内でとにかくコンバージョン数・売上を増やしたい場合にうってつけの入札戦略と言えるでしょう。

②重視する指標及び活用おすすめシーン

コンバージョン数をとにかく重視する場合に活用することをおすすめします。

以下のような状況で導入を検討してみてください。

  • 繁忙期でとにかくコンバージョン数を増やしたい
  • 目標コンバージョン単価でCPAが十分合っているので、可能な限りコンバージョンを増やしたい
  • コンバージョンが取れるニーズのあるサービスか早急に検証したい
  • 決算前やIPO直前で売上を増やすことが最優先である

ビジネスの状況次第ではCPAよりコンバージョン獲得が最優先になることもあるため、このような状況下ではコンバージョン数の最大化がおすすめです。

③注意点

■クリック単価が異常に引き上げられ、コンバージョン単価の高騰に繋がることもある

キャンペーンの日予算を使い切ることを目標に入札調整されるため、クリック単価が異常に高くなってしまうことがあります。

上記が実際にあった事例ですが、クリック単価の相場が50円程度のキーワード郡に対して、コンバージョン数の最大化を入れたところ、1,000円くらいに上がってしまった。なんてこともあります。

システムがコンバージョン率の高い検索シグナルを考慮した結果ではありますが、ここまで高くなってしまうと獲得できるクリックが著しく減少し、コンバージョン単価の高騰に繋がってしまいます。特に小額予算で運用する場合は注視すべきでしょう。

クリック単価やコンバージョン単価の高騰を避けたい場合は、個別クリック単価や目標コンバージョン単価で運用をしてください。

2-4. クリック数の最大化

入札戦略機能メリット重視する指標媒体ヘルプページ
クリック数の最大化予算内でなるべく多くのクリック数を獲得できるように入札単価を自動設定するクリック数の最大化に繋げるクリック数Google広告
Yahoo!広告

予算内でクリック数を最大化できるように入札価格を調整する自動入札戦略です。

①メリット

クリック数の最大化に繋げる広告配信が可能です。アクセス数を増やすのに適した入札戦略です。

コンバージョンに繋がるかどうかは考慮しない入札戦略ですので、クリック単価の低いキーワードに配信が偏ることがあります。コンバージョンを考慮する場合は、目標コンバージョン単価もしくはコンバージョン数最大化の導入を検討しましょう。

②重視する指標及び活用おすすめシーン

クリック数(アクセス数)をとにかく増やしたいときにおすすめです。以下のような認知目的の広告配信と相性がよいです。

  • キャンペーンやセールに向けて、できるだけたくさん集客したい
  • 商品やサービスの認知度を上げたい

③注意点

■コンバージョン地点を設けて配信するほうが、売上UPに繋がる広告配信になる場合もある

上記のようなシーンでも、コンバージョン地点を設けてコンバージョン最適の入札戦略を導入したほうが、売上UPに繋がる配信ができる場合もあります。(クーポンページのビュー、先行案内の申し込みフォーム到達など、関心を示すユーザー行動をコンバージョンと定義)

私はコンバージョン地点を設けることがほとんどですので、あまり使わない入札戦略です。

2-4. 目標広告費用対効果

入札戦略機能メリット重視する指標媒体ヘルプページ
目標広告費用対効果目標の広告費用対効果(≒ROAS)の達成を目指せる入札単価を自動設定する目標の広告費用対効果に近づけるROAS(広告費に対する売上の割合)Google広告
Yahoo!広告

目標の広告費用対効果(≒ROAS)の達成に近づけつつ、コンバージョン値を最大化する入札単価を設定できる自動入札戦略です。

ECでリスティング広告を配信する際は、コンバージョン数よりも売上の伸び(ROAS)で費用対効果を判断すことが多いため、この入札戦略がおすすめです。目標の広告費用対効果のパーセンテージに合わせてクリック単価を調整してくれます。

コンバージョン値の最大化に目標広告費用対効果のパーセンテージを設定すると目標広告費用対効果の入札戦略になります。

ちなみにコンバージョンと値は、コンバージョンポイントにコンバージョンの価値を割り当て、広告の効果測定をしやすくする機能です。発生した売上を動的に割り当てたり、固定金額の入力が可能です。

①メリット

目標の広告費用対効果(ROAS)に繋げる広告配信が可能です。

例えば目標費用対効果を500%に設定した場合は、広告費用の5倍のコンバージョン値が得られるように入札価格が調整されます。広告費用対効果(ROAS)はコンバージョン値(売上) ÷ 広告費用 × 100% で計算できます。

目標の値に基づいて、売上の伸び幅の大きいキーワードは入札を強化し、小さい場合抑制するようになります。そのためECであれば、売上金額の大きい商品に関するワードが検索された際は、入札が大きく引き上げられます。

②重視する指標及び活用おすすめシーン

ROASを重視したい場合におすすめです。そのため基本ECでの利用を推奨します。

他の業種であれば、複数コンバージョンポイントがあり、それぞれの重みが異なる場合に活用できます。

例えば以下3つのコンバージョン地点があり、メール問い合わせ完了のコンバージョンを多く獲得したい時に有効です。

  • メール問い合わせ完了
  • 電話ボタンタップ
  • LINEボタンタップ

この場合は、メール問い合わせ完了のコンバージョン値を大きく設定し、それ以外を小さくすればメール問い合わせ完了の確率が高いユーザーが検索した際に入札が引き上がるようになります。コンバージョンポイントを複数計測している場合は、ぜひご検討ください。

ただ設定が少々ややこしくなるので、初心者の方はまず目標コンバージョン単価で運用することをおすすめします。

③注意点

■コンバージョン値に動的な値を入れる場合はトラッキングタグの編集が必要

ECのような注文ごとにコンバージョン値が変動する場合は、コンバージョンごとに動的にコンバージョン値を割り当てることを強く推奨します。この設定をするためには、コンバージョントラッキングコードにタグを追加する必要があります。

専門知識が要求されるためエンジニアでないと対処が難しいですが、以下のようなカートシステムを利用している場合は比較的簡単に注文金額をコンバージョン値に割当可能です。これらは私が設定のフォローをした経験があります。

  • MakeShop
  • Shopify
  • カラーミーショップ
  • EC-CUBE
  • Futureshop

サービスごとにマニュアルが用意されているはずですので、ご覧の上進めてみてください。以下広告媒体のヘルプページになります。

Google広告ヘルプ 注文や購入ごとに変動するコンバージョン値をトラッキングする
Yahoo!広告ヘルプ コンバージョン測定タグの高度な設定【運用型】

■過去30日間にコンバージョン15 件以上獲得が導入の目安

使用条件として、過去30日間にコンバージョン15 件以上獲得していることが推奨されています。コンバージョン数が少なすぎると入札の最適化が上手く働かない可能性がありますので、その場合は個別クリック単価を利用してみてください。あくまで目安条件なので15件以下 = 導入NGではありません。

2-5. コンバージョン値の最大化

入札戦略機能メリット重視する指標媒体ヘルプページ
コンバージョン値の最大化予算を消化しつつコンバージョン値(≒売上)を最大化できるように、入札単価を自動設定するコンバージョン値の最大化に繋げるコンバージョン値Google広告
Yahoo!広告

コンバージョン値(≒売上)を最大化できるように、入札単価を設定する自動入札戦略です。目標の広告費用対効果を設定せずコンバージョン値の最大化を導入すると、コンバージョン値の最大化の入札戦略になります。

目標コンバージョン単価と同様に、名前だけ見るとコンバージョン値の最大化に貢献するメリットしかないような入札戦略ですが、キャンペーンの日予算を使い切ることを目標に入札調整されるため、クリック単価が高騰し、CPAが高騰する恐れがあります。CPAを重視する場合は目標広告費用対効果の設定を推奨します。

Google広告ヘルプ 「コンバージョン値の最大化」入札戦略について

①メリット

コンバージョン値の最大化(≒売上最大化)に繋げる配信ができることです。目標広告費用対効果は指定したROASを目指しますが、こちらは最大化が目標になります。

②重視する指標及び活用おすすめシーン

コンバージョン値をとにかく重視する場合に活用することをおすすめします。基本はECでの活用になるはずですので、その前提で以下のようなCPA度外視で売上を最大化したい場合導入を検討してみてください。

  • 繁忙期でとにかく売上を増やしたい
  • 目標広告費用対効果でROASが十分合っているので、可能な限り売上を増やしたい
  • 決算前やIPO直前で売上を増やすことが最優先である

ビジネスの状況次第ではROASより売上が最優先になることもあるため、このような状況下ではコンバージョン値の最大化がおすすめです。

④注意点

■クリック単価が異常に引き上げられ、コンバージョン単価の高騰に繋がることもある

コンバージョン数の最大化同様、キャンペーンの日予算を使い切ることを目標に入札調整されるため、クリック単価が異常に高くなってしまうことがあります。クリック単価やコンバージョン単価の高騰を避けたい場合は、個別クリック単価や目標広告費用対効果で運用をしてください。

2-6. 目標インプレッションシェア

入札戦略機能メリット重視する指標媒体ヘルプページ
目標インプレッションシェア検索結果の最上部、上部、または任意の場所に広告が表示されるように、入札単価を自動設定する広告の100%表示を目標に配信できるインプレッション数Google広告
Yahoo!広告

選択した箇所で広告が表示されるように、入札単価を設定する自動入札戦略です。下記のようにどの位置に表示するか選択して、該当箇所に広告が表示される頻度(インプレッションシェア)を指定できます。

なお、自動入札戦略ではありますが、上限CPCの設定も可能です。

①メリット

検索結果上部への広告表示機会を増やせることです。ユーザーの目に広告を見せる頻度を増やしたい場合に有効的な入札戦略です。

②重視する指標及び活用おすすめシーン

インプレッション数を重視する際におすすめです。活用シートとしては、ブランド認知を高める観点で指名ワードを配信する場合は相性が良いでしょう。

指名ワードのみを配信するキャンペーンに対して、検索結果ページの最上位&目標インプレッションシェア100%に設定すれば、指名ワードを検索した際に広告が100%表示するようになります。

④注意点

■キャンペーンの日予算や上限CPCの価格が低いと指定したインプレッションシェアは未達になる可能性がある

キャンペーンの日予算が途中で尽きてしまったり、上限CPCの入札価格が低いとインプレッション シェアの目標を達成できなくなることがあります。上位表示を恒常的に実現したい場合は、日予算と上限CPCは高めに設定しておきましょう。

■問い合わせや資料請求等のコンバージョン獲得目的で一般ワードを配信する場合は非推奨

目標インプレッションシェアはコンバージョンに繋がるかどうかのシグナルを加味せず配信します。そのため問い合わせや資料請求などのコンバージョン獲得が目的であれば、コンバージョン数最大化や目標コンバージョン単価を使うことをおすすめします。上位表示させ、認知拡大に繋げる際にピッタリの入札戦略です。

4. リスティング広告の自動入札戦略を働きやすくするためのコツ

ここからはリスティング広告の自動入札戦略(スマート自動入札)の働き促進に繋げるコツをご紹介します。導入すれば必ず成果が向上するものではないため、お伝えするポイントを反映させ、自動入札の力が発揮しやすい状態に整えてみてください。

4-1. キャンペーンと広告グループを最小限の数で極力構成する

まず重要な点は、可能な限りシンプルにアカウント構造を設計しましょう。自動入札戦略を上手く働かせるには、インプレッションを極力1つのキャンペーンや広告グループに集約することがポイントです。

データを集約して蓄積しないと機械学習が機能しづくなり、PDCAサイクルの鈍化やコンバージョンの見込めるユーザーに配信しづらくなる可能性があります。

ただし、なんでもひとまとめにすればよいというわけではありません。コンポーネントごとに以下が異なる場合のみ分割することをおすすめします。

コンポーネント分割基準
キャンペーン・予算
・配信エリア
・配信期間
広告グループ・キーワードのテーマ:商品カテゴリやサービスカテゴリなど( ≒広告リンク先が違う場合)
※あくまで一例のため例外もあります

特にキャンペーンを無意味に分割してしまうと、予算が散るためデータの収集効率が格段に下がってしまう恐れがあります。注意しましょう。

ちなみにアカウント構造のシンプル化は、「hagakure」という名前でGoogleが推奨しています。あくまで推奨ですので、目的や状況次第では私は崩すこともあります。ただ、現状の自動入札の最適化スピードの向上を考えると、上述したhagakure構造で基本は組み立てるべきだと考えています。

4-2. 学習中ステータスが表示されている時は入札戦略をなるべく変更しない

自動入札戦略を導入するとステータスが学習中になります。表示されているうちは入札戦略をなるべく変更しないようにしましょう。自動入札は初段階は様々配信の検証をしながら、成果の良し悪しを判断して最適化していく仕組みになっており、この期間に該当します。

コンバージョン単価が急激に高くなるなど、調整したくなる場面があるかと思います。私の感覚ですが、1週間程度はグッと堪えて様子を見ることをおすすめします。時間が経つと学習が完了し、落ち着いてくることが多いです。私の感覚だと1週間くらいで学習ステータスが取れる印象です。

ちなみにYahoo!広告は、設定後2週間程度は自動入札タイプを変更しないことを推奨しています。(Yahooの自動入札は精度が高い印象はないのでどこまで当てにすればいいか悩みますが…

Yahoo!広告ヘルプ 自動入札タイプ「コンバージョン単価の目標値」【検索広告】

成果の関係上、変更しないといけない場面もあるかと思いますが、学習中は我慢するタイミングとして認識しておきましょう。

4-3. 特に増やしたいコンバージョンポイントのみをキャンペーンに目標として紐づける

コンバージョンに繋がるユーザーの入札を強化するには、キャンペーン目標に計測中のコンバージョン地点を紐づける必要があります。これにより、該当のコンバージョンが見込めるユーザーへの入札が強化されます。

通常登録したコンバージョンポイント全てが入札強化の対象になっているので、基本手を加える必要はありません。ただ以下条件に当てはまる場合は、特に増やしたいコンバージョンポイントのみをキャンペーンに目標として紐づけることをおすすめします。

  • 登録済みのコンバージョンポイントが5個以上など多い且つ、重要度が異なる
  • ボタンタップ系のCVで重要度が低めのマイクロコンバージョンを設定している

特にCVに繋がりやすいボタンタップ系のコンバージョンを計測していると、このアクションに繋がりやすいユーザー中心に入札が強化され、重要度の高いフォーム送信のコンバージョンユーザーへの配信量が減少する可能性があります。

このような傾向が見られるようであれば、特に増やしたいコンバージョンポイントのみをキャンペーンに目標として紐づけてください。下記のようにカスタム目標を追加して、該当コンバージョンポイントのみ紐づけるとスムーズですのでぜひ活用ください。

4-4. ボタンタップ系のCVを計測中の場合は検索パートナーのカットを検討する

自動入札を導入しており、ボタンタップ系のCVを計測している場合は、検索パートナーのカットを検討してください。2025年3月時点、検索パートナー面に対してアドフラウド(広告費を搾取する行為の総称)が発生しています。これによりCPA悪化に繋がっている事象があります。

検索パートナー経由で広告がクリックされると、検索パートナーに対して収益が発生する仕組みとなっています。そのため悪意のある業者が広告をクリックしてタップCVを発生させ、Googleのシステムに対して、費用対効果高い良い配信面だと認識させ、クリックを誘発させる手口が横行しています。自動入札はCVの見込める箇所の入札を強化する仕組みとなっているため、これを悪用したものです。

実際の例ですが、キャンペーンのネットワークの分類を開き、上図のように検索パートナーのクリックが増えており、CPAが異常に低い状態であれば、アドフラウドの影響を受けている可能性が高いです。心配な方は検索ネットワークのチェックは外しておくことをおすすめします。

今後改善されるかとは思いますが、現状検索パートナーに配信するのはリスクがありますので注意してください。

5. リスティング広告の入札単価の決め方

最後に手動入札である個別クリック単価を導入する際の、入札単価の決め方を説明します。この通りに決めていただければ、目的から大きくズレた単価を設定することはないはずです。ぜひ参考にしてみてください。

具体例を交えつつ説明をしていきます。

5-1. ビジネスの限界CPA(LTV)を理解する

まずは広告出稿するビジネスの限界CPAを理解しましょう。限界CPAとはLTVを加味した利益が0になるCPAです。限界CPA = LTVとなるため、LTVを計算してください。

LTVとは「顧客生涯価値」を意味するLife Time Valueの略で、顧客が自社と取引を開始してから終了するまでにもたらす利益を表す指標です。平均顧客利益 × 購買頻度 × 継続期間で算出できます。

リピートされる商材であれば、一回の取引で得られる利益ではなく、LTVベースで赤字にならない限界のCPAを理解することが重要です。

例えばりんごの通販で、一度の取引で得られる平均利益は2,000円だとします。しかし3ヶ月に一度リピートされ、おおよそ3年間は継続して注文されているとします。するとLTVは2,000円 × 4回 × 3年 = 24,000 円となり、限界CPAは24,000円となります。

5-2. 見込めるコンバージョン率を決定する

次は見込めるコンバージョン率を決めます。CPAは CPC ÷ CVRで計算できますので、CVRの値を仮ぎめして、クリック単価(入札価格)を設定していきます。

CVRはコンバージョンポイントや業種によってまちまちですが、参考データがない場合は以下を参考に代入してみてください。経験上この位に収まることが多い印象です。

  • ボタンタップCV:2-4%
  • 送信CV:1-2%

今回は購入完了のCVのみ計測するとして2%で設定します。Googleアナリティクス等で計測した参考値があれば、そちらを参考に決定しましょう。

なお、CPAの計算式の理解が曖昧な方は下記記事を合わせてご覧ください。

リスティング広告のCPAを下げる方法と事業拡大する上での向き合い方

5-3. 目標CPAが達成できるクリック単価を入札価格として設定する

最後にCPAの方程式からCPCを計算しましょう。これが目安の入札価格になります。

24,000円 = CPC ÷ 2% を計算すると480円となります。入札価格(クリック単価)は480円を上限とすべきことがわかりましたので、この値を設定しましょう。

キーワードによってCVRやROASが異なるので、厳密に決める場合はこれらを加味して計算したほうがよいですが、大枠の入札価格を決める程度で個人的には問題ないと感じます。配信しつつ微調整すればOKです。

相場のクリック単価より著しく低い価格を設定すると広告が表示されません

相場のクリック単価より入札価格が低すぎるとオークションに参加できず広告が出ません。広告表示するための最低入札価格がありますのでご注意ください。

相場のクリック単価はキーワードプランナーのページ上部に掲載された広告の入札単価(高額帯)を参照ください。キーワードプランナーの操作方法やクリック単価が決まる仕組みは、下記記事を参考にしてみてください。

リスティング広告のクリック単価相場の調べ方と効果的な下げ方

まとめ

リスティング広告の入札とは、広告がクリックされた時に支払う料金(クリック単価)の上限を決める設定のことです。

入札設定の方法は大きく自動と手動の2つがあり、現在の主流は自動入札戦略です。以下のように様々ありますが、私は個別クリック単価か目標コンバージョン単価を利用することが多いです。

迷ったらこれらから優先して使ってみてください。

入札戦略機能メリット重視する指標媒体ヘルプページ
個別クリック単価(おすすめ)上限クリック単価を自由に設定するクリック単価の上げ下げが自在にできるクリック単価
コンバージョン単価
Google広告
Yahoo!広告
目標コンバージョン単価(おすすめ)目標コンバージョン単価内でコンバージョン数を最大化するよう入札単価を自動設定する入札価格を自動で設定しつつ、コンバージョン単価抑制に繋げるコンバージョン単価
コンバージョン数
Google広告
Yahoo!広告
コンバージョン数の最大化予算を消化しつつ最大限のコンバージョンが得られるよう、入札単価を自動設定するコンバージョン数の最大化に近づけるコンバージョン数Google広告
Yahoo!広告
クリック数の最大化予算内でなるべく多くのクリック数を獲得できるように入札単価を自動設定するクリック数の最大化に繋げるクリック数Google広告
Yahoo!広告
目標広告費用対効果目標の広告費用対効果(≒ROAS)の達成を目指せる入札単価を自動設定する目標の広告費用対効果に近づけるROASGoogle広告
Yahoo!広告
コンバージョン値の最大化予算を消化しつつコンバージョン値(≒売上)を最大化できるように、入札単価を自動設定するコンバージョン値の最大化に繋げるコンバージョン値Google広告
Yahoo!広告
目標インプレッションシェア検索結果の最上部、上部、または任意の場所に広告が表示されるように、入札単価を自動設定する広告の100%表示を目標に配信できるインプレッション数Google広告
Yahoo!広告
※キャンペーン単位でどれを採用するか決めましょう
※一部Google広告とYahoo!広告で名称が異なるものがありますが、役割は一緒です