リスティング広告のCPA(コンバージョン単価)を下げること自体は難しくありません。クリック単価を落とせば簡単に下げられるからです。
クリック単価はキーワードの入札価格を下げれば抑制可能なので、誰でもできます。CPAはクリック単価(CPC) ÷ コンバージョン率(CVR)で求められるため、数式を見ると理屈がわかりやすいはずです。
しかしこの方法を安易に取ることはおすすめできません。なぜなら広告の掲載順位が下がるため、獲得できるコンバージョンの総数が減少してしまい、売上が上がりにくくなってしまう恐れがあるからです。
リスティング広告が大赤字なので早急にCPAを下げたい。といった、スピード感を求める場合は例外ですが、そうでなければ以下表の着手優先度が高い方法から順に対処し、コンバージョンの数を増やしつつ、CPA抑制をしていくことをおすすめします。上手くいけばうなぎのぼりで売上・利益が積み上がっていくはずです。
改善指標 | 実施施策 |
---|---|
クリック単価(CPC) | 広告の品質を改善する |
広告表示オプションを漏れなく設定する | |
入札価格を下げる(緊急度が高い場合は優先) | |
クリック単価の高いキーワードの停止 | |
競合広告主が多いエリアの配信カット | |
コンバージョン率(CVR) | 登録キーワードの見直し |
除外キーワードの登録 | |
広告文の見直し | |
ランディングページの見直し | |
予算配分(アカウント構成)の見直し | |
入札戦略の見直し | |
配信曜日時間の見直し | |
配信エリアの調整 | |
広告掲載順位の引き上げ |
この記事では、リスティング広告のCPAをすぐ下げられる方法まず説明します。しかしこの方法はベストではない場合もあります。よって売上を増やしつつCPAを抑制する理想の対処法を、CPAの概念や構成要素などの仕組みから手ほどきしながら解説していきます。
CPAをただ下げるだけであれば、私は誰でもできると思っています。ただ売上を増やしつつCPAも下げるのは頭をひねる必要があります。そのためぜひこの記事で、事業拡大するためのCPAとの向き合い方も理解しつつ、対処法を理解していただければ幸いです。
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1. リスティング広告のCPAを下げる前に頭に入れておくべきこと
まずはじめに、リスティング広告のCPAを下げる前に知っておくべきことを説明します。概念や考え方を理解しておかないと、紹介する施策を打つ意味が腹落ちしなかったり、対処療法的な施策に走ってしまう恐れがあるため、しっかり押さえておきましょう。
1-1. CPAを因数分解して構成要素を理解しておく
CPAの計算式 | CPA抑制で必要なこと |
---|---|
Cost ÷ CV | ・コストの抑制 ・CVの増加 |
CPC ÷ CVR | ・CPCの抑制 ・CVRの向上 |
まず初めにCPAの構成要素を数式から因数分解して理解しておきましょう。
一般的な計算は「Cost ÷ CV」になりますが、因数分解をすると上図の通り冒頭で紹介した「CPC ÷ CVR」でも求められることがわかります。よってCPCの抑制、もしくはCVRの向上が改善で必要です。
運用していてCPAを下げる際は「CPC ÷ CVR」で考えたほうが進めやすいことが多いはずですので、こちらの計算式も覚えておきましょう。この数式が頭に入っていれば、どのくらいのCPC・CVRに着地させれば、目標CPAに収まるかを理解しつつ、運用ができるはずです。
少し掘り下げると、CPCは平均値がある程度決まっており、下げるとCVも減少する恐れがあります。よって目指すCVR目安を軸に運用することをおすすめします。
目標CPA | 平均CPC | 目指すCVR |
---|---|---|
10,000円 | 100円 | 1%以上 |
5,000円 | 100円 | 2%以上 |
2,500円 | 100円 | 4%以上 |
イメージをお伝えします。上の表をご覧ください。
例えば目標CPAが1万円だとすると、平均CPCが100円の商材であれば、CVRは1%以上にする必要があります。目標CPAが5,000円であればCVRは2%以上。2,500円だと4%以上です。CVRを上げることが難しい場合は、CPCを下げる必要があります。
このようにCPA = CPC ÷ CVR の公式を理解していれば、CPCとCVRから逆算した運用が可能になり、すべきことが明確になります。CPAを下げる上で1番重要な考えだと思っているので、ぜひ押さえてください。
1-2. 業界の相場クリック単価でCPAの平均値はおおよそ決まる
CPAは業界ごとにおおよそ平均値があり、下げられる限界があることを覚えておきましょう。CPAは低い数値を目指すべきですが、リスティング広告の仕組み上限界があります。
CPAは CPC ÷ CVR で求められる通り、CPCでおおよそのCPAは決まります。よって入札を低くしてCPCを大きく下げられれば、CPAもガッツリ抑制できます。しかし低くしすぎると広告ランクが下がり、広告が表示されなくなるので、相場より著しく下げるのは非常に困難です。
CPCは上図のように、キーワードごとにある程度の相場が決まっています。あくまで目安かつ上部掲載実績からの類推ですが、薬剤師の転職であれば4,000円〜15,000円。りんごの通販であれば14円〜62円あたりであることがわかります。
CVRは目的によって様々ですが、問い合わせや資料請求獲得が目的であれば1%前後になることが私の経験上多いです。よってこれらキーワードのCVRを1%とすると、試算ですが以下位のCPAに落ちくはずです。
キーワード | 想定CPCの幅 | 想定CPAの幅 |
---|---|---|
薬剤師 転職 | 3,935円〜15,616円 | 393,500円〜1,561,600円 |
りんご通販 | 14円〜62円 | 1,400円〜6,200円 |
クリック単価が決まる仕組みの理解があやふやな方は、リスティング広告のクリック単価相場の調べ方と効果的な下げ方の記事も合わせてご覧ください。
1-3. LTVを理解し赤字にならない限界CPAを把握しておく
かけるべき広告費の上限値や下げる幅を把握するため、利益を最大化できる限界CPAを理解しておきましょう。そのため、LTVを明らかにすることが必要不可欠です。
LTVとは「顧客生涯価値」を意味するLife Time Valueの略で、顧客が自社と取引を開始してから終了するまでにもたらす利益を表す指標です。平均顧客利益 × 購買頻度 × 継続期間で算出できます。
リピートされる商材であれば、一回の取引で得られる利益ではなく、LTVベースで赤字にならない限界のCPAを理解することが重要です。
例えばりんごの通販で、一度の取引で得られる平均利益は2,000円だとします。しかし3ヶ月に一度リピートされ、おおよそ3年間は継続して注文されているとします。するとLTVは2,000円 × 4回 × 3年 = 24,000 円となり、限界CPAは24,000円と認識できます。
ここで一度の取引で2,000円利益が出るから、許容CPAは2,000円と認識してしまうと、CPCを低くしないといけないので入札単価を下げる必要があります。よって獲得クリック数及びCVが減少し、上図のように大きな機会損失が発生してしまいます。そのためLTVを理解して、許容できるCPAの上限を定めることが重要です。
1-3. CPAを下げる方向性は「削る」と「増やす」の2つがある
CPA抑制のために改善する指標は、CPCとCVRの2つですが、より大局的に見ると改善の方向性は「削る施策」と「増やす施策」の2つがあることを覚えておきましょう。改善すべき指標だけでなく方向性も理解しておくことで、施策の優先順位がつけやすくなります。
CPAは「Cost ÷ CV」「CPC ÷ CVR」の式で求められることからわかるように、構成する分母分子の増減で変化しますので、方向性が存在します。
ここで大切なのが、CPA抑制を第一目標にするのであれば、「削る施策」から優先して行うことです。なぜなら無駄になっている箇所はわかりやすく、多ければ改善のインパクトが大きいからです。
更に削る施策を外す確率は低いので、確実性も高いでしょう。広告運用に慣れていない初心者は特に優先して対応すべきです。これで余剰予算が多くなればCPA抑制と合わせて、CVを増やせることだってあります。
そのため「増やす施策」も重要ですが、CPA抑制を第一優先として考える場合は、削る施策から行いましょう。ただ抑制しすぎるとCVが減少する恐れもありますので注意が重要です。抑制も大事ですが、時にはアクセルを踏んでキーワード追加や入札の強化をすべき時もあります。
リスティング広告のCPAを下げる前に頭に入れておくべきことの説明は以上です。
2. リスティング広告のCPAをクリック単価を下げて抑制する方法
改善指標 | 実施施策 |
---|---|
クリック単価(CPC) | 広告の品質を改善する |
広告表示オプションを漏れなく設定する | |
入札価格を下げる(緊急度が高い場合は優先) | |
クリック単価の高いキーワードの停止 | |
競合広告主が多いエリアの配信カット |
ここからはリスティングのCPAの抑制方法を説明していきます。はじめにクリック単価を下げて抑制する方法を解説します。
着手優先度の高いものから順に紹介しますが、リスティング広告のCPAが全く合わず大赤字で問題になっている場合は、入札価格をまず下げてください。抑制するだけであればこれで対応可能です。
クリック単価の決まる仕組みや概念、施策の詳細等はリスティング広告のクリック単価相場の調べ方と効果的な下げ方で説明していますので、こちらも合わせてご覧ください。
では1つずつ要点を説明します。
2-1. 広告の品質を改善する
クリック単価を下げる最も理想は、広告の品質を改善し広告ランクを上げることです。広告ランクは広告の掲載順位とクリック単価を決める数値です。高ければ入札価格が低くても上部に広告が出せるようになるため、クリック単価が下がり、CPA抑制に繋がります。
広告ランクは「入札単価 × 広告の品質」 の式でおおまかに計算できます。見てわかる通り、広告の品質は、広告ランクを決定する重要な指標です。
広告の品質は、広告がユーザーにとって、どれほど有用性や利便性が高いものなのかを評価するための概念です。構成要素は全て公開されていませんが、Google公式ヘルプページを見ると、以下は関係していると記載があります。
- 検索内容に対する広告文の関連性
- ユーザーが広告をクリックする可能性の高さ
- ランディング ページへ進んだユーザーに提供されるエクスペリエンスの質
広告の品質の一部である品質スコアを向上させることで改善を促せるため、方法の詳細は品質スコアとは?注視して運用すべきは広告の品質である理由をご覧ください。少々ややこしい話ですが、運用をするのであれば欠かせない知識なので、仕組みや概念をしっかり理解しておくことをおすすめします。
2-2. 広告表示オプションを漏れなく設定する
広告表示オプションの設定有無も広告ランクの優劣を左右します。そのため、設定できるものは原則可能な限りすることを推奨します。広告表示オプションは広告と一緒に、テキストリンクや電話番号を表示できるオプション機能のことです。
広告表示オプションは以下のような種類があります。大体どんな商材でも設定できると考えられるオプションは設定のしやすさに★をつけていますので、迷うようでしたらこれらを優先して設定してみましょう。Yahoo!はこれより少し少ないですが概ね同じです。
広告表示オプションの種類 | 説明 | 設定のしやすさ |
---|---|---|
サイトリンク表示オプション | ランディングページ以外のリンク先を複数設定 | ★ |
コールアウト表示オプション | 商品やサービスの強みをテキストで表示 | ★ |
構造化スニペット表示オプション | 商品やサービスのラインナップを追加 | ★ |
画像表示オプション | 広告の横に画像を表示する | ★ |
電話番号表示オプション | タップすると架電できる電話番号を表示 | ★ |
住所表示オプション | 店舗住所を表示 | ★ |
価格表示オプション | 商品の価格を表示 | ★ |
ビジネスの名前 | ブランドや会社名を表示 | ★ |
ビジネスのロゴ | ブランドや会社のロゴを表示 | ★ |
リードフォーム表示オプション | リンク先に遷移させずリードフォームを掲載する | |
アプリリンク表示オプション | アプリのダウンロードリンクを表示 | |
プロモーション表示オプション | セールやプロモーション情報を表示 | |
販売者評価表示オプション | 口コミを表示 | |
メッセージ表示オプション | メッセージでの問い合わせを促す | |
アフィリエイト住所表示オプション | 商品を販売している最寄りの店舗住所を表示 |
2-3. 入札価格を下げる
クリック単価抑制に確実且つ即効性がある方法です。とにかく早くクリック単価を下げたいのであれば、まず着手をしてください。CPAも下がります。
個別クリック単価であれば入札価格を下げる。目標コンバージョン単価などの自動入札であれば、設定値を下げれば入札も下がりますので、このように対応をしましょう。
しかし広告掲載順位が下がるため、確保できるクリック数が減少し、コンバージョン数も減る恐れがあります。状況によりますが、ベストな方法ではないことも多いです。実施をおすすめするシチュエーションは以下の2つです。
- CPAが合わず赤字になっているためとにかく早急に抑制したい
- インプレッションシェアの損失率(予算)が発生している
特に損益分岐点である限界CPAを遥かに超えており、早急に黒字化する必要がある場合は、すぐ入札価格を下げてください。特にキャッシュに余裕がない場合はこの方針を取りましょう。
厳密に言えば状況によりますが、売上を上げる観点だとベストな方法ではないことも多いです。しかし、赤字を出し続けられる余裕がなければ早急にCPAを合わせる必要があるはずです。
実行しやすい方法ですが、これに固執すると売上も低下していくはずです。よってリスティング広告で達成したい本来の目的から遠のく恐れがあることを念頭に置いて進めましょう。
入札価格の抑制だけに頼らずCPAを下げ、CVを増やせる人が優れた運用者だと私は思っています。
2-4.クリック単価の高いキーワードの停止
クリック単価が高いキーワードを停止すればクリック単価は下がります。
ただ以下例のようにクリック単価が高くてもコンバージョン率が高ければCPAが合うため問題ないです。くれぐれもクリック単価だけ見て停止しないようにしてください。
- クリック単価100円 ÷ コンバージョン率1% = CPA 1万円
- クリック単価300円 ÷ コンバージョン率3% = CPA 1万円
2-5. 競合広告主の多いエリアの配信カット
登録したキーワードに入札をしている競合広告主が多いエリアの配信をカットしても、クリック単価は下がります。
例えば東京は多くの広告主がリスティング広告を配信しているため、地方と比べるとクリック単価が2倍、3倍になっている場合も少なくありません。よって東京の配信をカットすることでクリック単価が下がり、CPAを抑制できることも多いです。
商圏が広いビジネスの場合は、競合が多いクリック単価の高いエリアを避けて配信することも戦略の1つです。コンバージョン単価が合うように入札を下げて運用すれば問題ないことも多いですが、覚えておきましょう。
クリック単価を下げる方法の説明は以上です。やり方は色々ありますが、広告の品質を上げてクリック単価を下げるのがベストですので、覚えておきましょう。
3. リスティング広告のCPAをコンバージョン率を上げて抑制する方法
改善指標 | 実施施策 |
---|---|
コンバージョン率(CVR) | 登録キーワードの見直し |
除外キーワードの登録 | |
広告文の見直し | |
ランディングページの見直し | |
予算配分(アカウント構成)の見直し | |
入札戦略の見直し | |
配信曜日時間の見直し | |
配信エリアの調整 | |
広告掲載順位の引き上げ |
次はコンバージョンを上げてCPA抑制する方法を解説します。同じく優先度の高い施策から紹介しますが、要点だけお伝えすると、コンバージョン率の改善で最も重要なのはキーワードです。
キーワード = 狙うユーザーとみなして差し支えありませんので、キーワードがズレていると狙いもズレて、コンバージョン率も大きく下がります。時間がない場合でもキーワードだけは調整を怠らないようにしてください。
また、CPA抑制で課題になるのはコンバージョン率であることが多いはずです。よって厚めに解説をしています。クリック単価は入札を下げれば簡単に下がりますが、コンバージョン数が減少してしまいます。よってコンバージョン率の改善が課題になることが多いというロジックです。
コンバージョン率の概念や低くなってしまう要因はリスティング広告のコンバージョン率(CVR)を上げるためにやるべき施策まとめで説明していますので、こちらも合わせてご覧ください。
では1つずつ説明します。
3-1. 登録キーワードの見直し
商材を求めているユーザーの検索語句でクリックが集まるように見直しを行います。そのためまず、よくクリックされており、コストを投下している検索語句を確認しましょう。Google広告であれば検索語句の箇所から確認可能です。
上記のように費用を降順にして並び替え、コンバージョンが取れている語句や商材を求めている語句中心で予算が使えていれば、コンバージョン率が著しく低いことはないはずです。
しかし青枠のコンバージョンの取れていない語群が、商材を求めていないことが明らかで、費用を多く投下しているのであれば、登録キーワードや後述する除外キーワードを見直し、コンバージョン率を改善する必要があるでしょう。
ニーズがズレている語句のイメージと、登録キーワードの見直し例を記載しますので、判断の参考にしてみてください。無駄があれば省き、漏れがあれば追加をしましょう。
商材 | ニーズがズレている検索語句例 | 登録キーワードの対応例 |
---|---|---|
分譲マンション | 一戸建てや賃貸系の語句 | ・一戸建て、賃貸のかけあわせキーワードがあれば省く ・分譲マンションかけあわせキーワードのみ登録 |
清掃代行会社 | 自分で掃除する方法を調べている語句 | ・やり方関連のキーワードがあれば省く ・清掃代行、清掃会社かけあわせキーワードのみ登録 |
パーソナルジム | 自宅でできるトレーニングを調べている語句 | ・トレーニング名のキーワードがあれば省く ・パーソナルジムかけあわせのキーワードのみ登録 |
300社以上運用してきた私が教えるリスティング広告のキーワードの選び方の記事でキーワードの選定方法の詳細は説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
3-2. 除外キーワードの登録
クリックされている検索語句は除外キーワードでもコントロールできますので、登録キーワードの見直しと合わせてこちらも実行して、コンバージョン率を改善しましょう。除外キーワードとは、特定の語句を含む検索に対して広告が表示されないようにする設定のことです。
登録キーワードで大まかな狙う検索語句を決めて、少しズレた語句を除外キーワードで省くイメージをしていただくとわかりやすいと思います。
ニーズがズレている語句で多くクリックされているものがあれば、除外キーワード登録をしてください。登録する除外キーワードは以下のようなイメージです。
商材 | ニーズがズレている検索語句例 | 登録する除外キーワードの例 |
---|---|---|
分譲マンション | 一戸建てや賃貸系の語句 | 一戸建て、一戸建、賃貸、家、平屋、建売 |
清掃代行会社 | 自分で掃除する方法を調べている語句 | やり方、道具、仕方、裏ワザ、コツ、やる気、洗剤 |
パーソナルジム | 自宅でできるトレーニングを調べている語句 | 方法、自宅、器具、グッズ、自重 |
除外キーワードは登録するキーワードとマッチタイプの挙動が異なるので、違いを理解してから進めましょう。詳細は除外キーワードとは?効果の出る選び方と設定方法から理解すべき仕様をご覧ください。
3-3. 広告文の見直し
キーワード周りの見直しが完了したら、広告文の見直しをしましょう。目指すべき広告文は「ターゲットユーザーが絞り込まれており、商材の価値を伝わるもの」です。この広告文が作成できれば、コンバージョン率が高く、クリックもされる状態が作れるはずです。
目指すためには、以下2つがわかる広告文を作成するのがポイントです。
- ターゲットユーザーが検索している商品やサービスであることがわかる
- ユーザーの求めていることが満たされるのがわかる
例えば名古屋の味噌ラーメン屋がリスティング広告を配信したとすると、ターゲットユーザーは名古屋の味噌ラーメン屋を探している方。そして最も求められている価値は美味しさでしょう。
そのため「名古屋の絶品味噌ラーメンなら」といった広告文を作れば、名古屋の味噌ラーメンを求めている人且つ、美味しいそうなラーメンを提供してくれることがわかるので、見込み客からのクリック率を高めつつつ、コンバージョン率も高い状態が作れると想定できます。
広告文作成はとても奥が深いので、リスティング広告のコンバージョンが増える広告文の作り方と改善テクニックを見て、ぜひコツを理解しておきましょう。
3-4. ランディングページの見直し
ランディングページ(LP)の見直しもコンバージョン率改善に重要です。キーワードや広告文に問題がなくても、受け皿であるLPに問題があるとコンバージョン率は低くなってしまうので、手を抜かないようにしましょう。
改善すべきか判断するために特に見るべき箇所は以下です。これらがズレている場合は改善を行いましょう。
- ファーストビューで商品の特徴とベネフィットが伝わる
- ユーザーのニーズを満たすコンテンツが配置できている
- バリュープロポジションが訴求できている
- デザインがターゲットユーザーのトンマナに合っている
LPで最も大切な箇所はファーストビューですので、ここから優先して確認するようにしてください。上記で出た用語の解説や、具体的な改善手順はLPがリスティング広告に必要な理由と格安で成果の出るものを作る手順で解説していますので、こちらをご覧ください。
そもそもLPではなく、ホームページに配信している場合はLP作成することをおすすめします。ホームページは情報量は充実していますが、特定の語句を検索した人にとっては、情報過多になる可能性があります。よってリスティング広告とLPは基本セットにしたほうがコンバージョン率は上がることが多いはずです。
3-5. 予算配分(アカウント構成)の見直し
予算配分の見直しでもコンバージョン率は改善されます。予算配分はアカウント構成で決まりますので、アカウント構成を見直しましょう。コンバージョン率の高い箇所へ予算が集中して投下されるように構成するのがポイントです。
以下のようにコンバージョン率が低い箇所にも予算が分散されている可能性が高いようであれば、見直しをおすすめします。
- コンバージョンの見込み度別にキャンペーンが分かれていない
- 広告予算が月額100万円以下など少額であるが、キャンペーンが5つ以上など多い
- そもそも特に目的がなくキャンペーンを分けている
予算はキャンペーンで指定可能ですので、キャンペーンの分け方が肝になります。
気をつけることは多岐にわたりますが、要点をお伝えすると、コンバージョン率の高いキーワードを中心に内包したキャンペーンを作り、そこに予算を多めに配分するようにしてください。予算が50万以下など少額であれば、経験上キャンペーンは多くても3,4つに収まることが多いです。
3-6. 入札戦略の見直し
アカウント構成の見直した後は入札戦略を見直しましょう。入札戦略とは選んだ目標に応じてシステムがキーワード毎に最適な入札をしてくれる機能です。キャンペーン単位で設定可能です。
選択すべき入札戦略は状況によるので、一概にこれにしてください。とは言いづらいのですが、コンバージョン率を改善することが目的であれば、「目標コンバージョン単価」をおすすめします。簡単に言うと、コンバージョンに繋がりやすい検索語句をシステムが判断して強化してくれる仕組みになっています。
種類ごとの挙動は以下表をご覧ください。
入札戦略の種類 | 説明 |
---|---|
個別クリック単価 | 上限入札単価をキーワード毎に設定して配信 |
目標コンバージョン単価(最もおすすめ) | 指定のコンバージョン単価を目指しながら配信 |
コンバージョン数の最大化 | コンバージョン数を最大化を狙いつつ、予算を使い切るように配信 |
クリック数の最大化 | 予算内で最大限のクリック数を獲得できるように配信 |
目標インプレッションシェア | 検索結果ページの最上部、上部、または任意の場所に広告が表示されるように、入札単価を自動調整して配信 |
目標広告費用対効果 | 指定のROAS(広告費に対する売り上げの割合)を目指しながら配信 |
コンバージョン値の最大化 | 予算内で最大限のコンバージョン値を目指しながら配信 |
コンバージョン数の最大化も悪くはないのですが、設定した予算を使い切るように動くため、入札価格が著しく引き上げられる恐れがあります。注意をしておきましょう。
3-7. 配信曜日時間のの見直し
ユーザーが購買や情報収集を積極的に行わないと考えられる、コンバージョン率の低い曜日時間帯への配信をカットしましょう。特に予算が少ない場合は、コンバージョン率が高い箇所に予算を集中させることが重要になるため、細かい設定ですが疎かにしないようにしましょう。
例えばBtoB商材であれば、土日や平日営業時間外の9時〜18時以外のカットが挙げられます。メール問い合わせや資料請求など顧客対応が必要ないコンバージョンポイントであっても、コンバージョン率が低い傾向であれば停止を検討すべきです。
またBtoC商材であっても、深夜はモチベーションが低い状態で検索しているユーザーが多く、コンバージョン率が低いと想定されるためカットする。など、ターゲットユーザーの日常生活を考えながら、配信すべき曜日時間帯を選択することをおすすめします。
ただし、自動入札戦略を入れている場合は細かい曜日時間の調整は不要です。媒体がコンバージョン率が高い時間帯に自動で寄せて配信をしてくれます。
3-8. 配信エリアの調整
コンバージョン率の高いエリアに集中して配信するよう設定しましょう。特に店舗ビジネスであれば、予算の大きさにもよりますが、原則店舗から近いエリアを中心に配信すべきです。店舗近くのユーザーは来店に繋がりやすいため、コンバージョン率が高くなります。
曜日時間帯の設定と同様に、自動入札戦略を入れていれば、エリア毎のコンバージョン率を加味してシステムが配信強弱をつけてくれます。そのため、自動入札戦略を導入済みの場合は、明らかに不要なエリアをカットする程度の調整で問題ないです。
3-9. 広告掲載順位の引き上げ
広告を上位表示するように調整できるとコンバージョン率は上がる場合があります。特に緊急性の高い商材であればこの傾向が顕著です。例えば、葬儀、鍵交換、水回りトラブルなどです。
ユーザーは早く問題を解決したいと考えているため、目につきやすい上位表示されている広告をクリックして、すぐに問い合わせるため、コンバージョン率が高くなるという仕組みです。下位表示でもクリックはされますが、急いでいないユーザーが多く含まれると想定されるため、上位表示されている広告をクリックするユーザーよりはコンバージョン率は下がるでしょう。
広告掲載順位を上げる方法は、クリック単価の章の通り、キーワードの入札価格を引き上げるか、広告の品質を改善するかです。優先度を高めて対処するのであれば入札価格を上げてください。
4. リスティング広告のCPAと向き合っていく上での注意点
さいごにリスティング広告のCPAと向き合っていく上で注意しておきたいことをご紹介します。広告運用者であれば永遠のテーマですので、自分も日々精進している身分ではありますが、少しでも参考になれば幸いです。
かなり細かい内容も含みますので、気になるところだけかいつまんでみてください。
4-1. 入札価格抑制を安易に行わない意思を強く持とう
重要なことなので繰り返しますが、CPAは入札を下げてクリック単価を下げれば簡単に下がります。しかしこの方法に頼り切りになると、コンバージョンの総数が減少し、売上を上げられる上限が早い段階で頭打ちになるため、事業拡大の観点では良くないです。
つまり、入札価格抑制が中心の運用方法だとリスティング広告のポテンシャルを活かしきれないと判断しています。
リスティング広告のCPAが合わず大赤字、予算によるインプレッションシェアの損失率が大きいなど、下げるべきシチュエーションもありますが、売上を拡大していきたいのであれば、広告の品質及びコンバージョン率の改善をしてCPA抑制する意識を持つべきでしょう。
私は入札抑制は麻薬みたいなものだと思っています。
部下の運用者を十人以上教育していた経験から、入札価格を一度下げたら上げることは気持ち的に難しくなる方が多かったです。そしてコンバージョンがどんどん取れなくなり、衰弱したアカウントになっていきます。
コンバージョンを増やしつつ、CPAを下げたいのであれば、時にはアクセルを踏んで入札を上げたり、コンバージョン率が上がると信じられるキーワードを追加する対応が求められます。
そのため入札価格抑制の中毒者にならないよう、強い意思を持つのが重要です。置きに行くことが主軸の運用スタイルでは頭打ちしますので注意してください。
4-2. 可能であれば売上(ROAS)、利益(ROI)を見よう
指標名 | 意味 | 計算式 |
---|---|---|
ROAS(広告費用対効果) | 広告費に対してどれだけの売り上げをあげられたか測る指標 | 売上 ÷ 広告費×100(%) |
ROI(投資利益率) | 広告費に対してどれだけの利益が得られた測る指標 | 利益額 ÷ 広告費×100(%) |
CPAを抑制する目的は売上・利益を増やすのが目的のはずです。そのため可能であればROAS、ROIの指標を見るようにしてください。これらが見れればCPAを細かく管理する必要はなくなります。ベストはROIでの管理ですが、リスティング広告のシステム上難しいため、ROASで見ることをおすすめします。
特にECなど商品によって売上や利益が異なるビジネスの場合はこれらで管理をすることが重要です。コンバージョン1件でもキーワード(商品)によって重みが全く異なるからです。例えば1,000円の商品と10万円の商品であれば売上も利益も大きく異なるはずですよね。これを同じコンバージョンとして扱うのはビジネス的にナンセンスでしょう。
少し難しい話になりますが、コンバージョンタグのvalue部分に、商品の金額と連動した数値を入れる変数を入れることでコンバージョン値に商品金額が跳ね返るようになります。お使いのカート会社に確認すれば導入のサポートを受けられるはずですので、ぜひ実践してみてください。
ECの案件でなくてもコンバージョン値のルールの機能を使えば、任意の地域やデバイス、オーディエンスに合わせて値を設定できます。まずは一律で問題ありませんが、ビジネスの状況に合わせて細かく設定したい場合はぜひ使ってみてください。
なお、ROASベースで運用するのであれば、自動入札戦略は目標広告費用対効果を選択をしましょう。コンバージョン値を最大化するように入札をコントロールしてくれます。
4-3. 予算を増やす際は増分CPAを考慮しよう
コンバージョンを増やすには予算増額が必要になってきます。その際にCPAができるだけ上がらないように予算投下する媒体やキャンペーンを選択すべきですが、これを考える際、増分CPAの知識があると役立ちます。かなりややこしいので初心者向けでない話ですが、正確にCPA抑制したい場合はぜひ理解をしておきましょう。
増分CPAとはコンバージョン1件を追加で獲得するためにかかるコストのことです。図解すると下記のグラフの傾きが増分CPAと言い換えられます。
理屈の詳細は後述しますが、予算を増やすほど上図のように獲得できるコンバージョンのカーブは緩やかになるため、増分CPAは高くなっていきます。よって効率的にコンバージョンを増やしたいのであれば、増分CPAが低い媒体やキャンペーンを把握し、そこに集中して予算を投下する必要があります。
媒体 | 広告費用 | コンバージョン | CPA |
---|---|---|---|
Google広告 | 1,000,000円 | 100 | 10,000円 |
Yahoo!広告 | 500,000円 | 40 | 12,500円 |
Microsoft広告 | 300,000円 | 20 | 15,000円 |
しかしこの知識がないと上記のような状況のときに、感覚でCPAの低いGoogle広告を予算投下先に選んでしまい、コンバージョンが効率的に増やせなくなる恐れがあります。
例えばの話ですが、各媒体上記のような増分CPAであることが計算して分かれば、Microsoft広告に予算を追加するのが最も効率的であると判断できます。
増分CPAが予算を増やすと高くなる理由を端的に説明すると、需要のあるターゲットの母数には限りがあるため、一定のCPAで獲得できる数は限界があるからです。
もう少し具体的に説明すると、需要に対して投下予算が少ない内はほぼ線形でコンバージョンは増加します。しかしある一定のラインからメインターゲットの母数以上に広告の配信範囲が広がるので、獲得見込みの低いターゲット層からクリックが増えます。また、入札を強化する必要が出てくるためクリック単価も基本的に高くなります。よってコンバージョン率は低下し、クリック単価が高くなるので増分CPAは高騰していきます。最終的には予算を増やしてもコンバージョンはほぼ増加しなくなります。
増分CPAを計算方法と準備するものは以下の通りです。どのような計算や関数を組んでいるか記載しますので、気になる方は参考にしてみてください。詳しく説明するとかなり複雑になってしまうので手順と合わせて簡潔に説明します。
関数を組み込んだスプレッドのテンプレートも配布しますので、理屈はいいからとりあえず計算したいという方は、下記ボタンからシートをコピーし、黄色のセルの日別のコストとコンバージョンの数を入力して試算してみてください。媒体別にタブが分かれていますので、Google広告とYahoo!広告で分けて使って頂くとスムーズだと思います。
なお、グラフ(対数近似曲線)から計算する方法もありますが、関数を用いて配信コストとコンバージョン数から、配信コストの自然対数、傾き、切片を計算して、対数近似曲線の式を取得するほうが工数がかからず楽ですので、こちらの方法を説明且つおすすめします。対数近似曲線や、傾きと切片の意味がわからない場合は下記ページを参考にしてみてください。
■参考
中2数学5分でわかる!傾きと切片
近似曲線とは|リサーチ マーケティング用語集
【準備するもの】 ■媒体からダウンロードした日別レポート ・日時 ・利用コスト ・コンバージョン *前月の実績を元に試算するとして30日分 |
【計算手順】
行っている計算手順は以下の通りですが、配布したスプレッドシートで括弧内のみ対応していただければ計算可能です。
- 配信コストとコンバージョンの日別実績を並べる(B、C、E列を入力)
- 配信コストの自然対数をln関数で取得する
- 配信コストとコンバージョンの傾きをslope関数で取得する
- 配信コストとコンバージョンの切片をintercept関数で取得する
- 傾き × 投下後の費用 + 切片を行い、見込みコンバージョン数を出す(J列を入力)
- 見込みコンバージョン ÷ 投下後の費用を行い、増分CPAを計算する
※J列以降の計算結果を、月の日数で掛け算すれば月間のシミュレーションになります
ちなみに確認用の対数近似曲線のグラフに表示されているR2乗値(簡単に言うとコストとCVのばらつき度合い)は0.7〜0.8程度が望ましいです。値が大きいほど精度が高いです。配信コストとコンバージョンに大きなばらつきや外れ値がある場合低くなりますので、目安数値以下であればそれぞれの数値を違和感のない形で調整して相関がある状態にしてみてください。
インプレッションシェア(予算)が発生している場合は、こちらを軸にCPAが低い投下対象及び投下予算を決めましょう。増分CPAの計算はデータのばらつきや外れ値が出る関係で正確にはできません。よって誤りが発生してしまうリスクもあります。
インプレッションシェア(予算)が発生していれば、理論上CPC、CVRを悪化させずに予算追加できる額を計算できますので、こちらの方が正確にCPA抑制に繋がる投下先を試算できます。
インプレッションシェアとは?改善が成果向上に必須な理由とその対処法の3-1に計算方法の説明がありますので、ぜひご覧ください。
4-4. 本当にCPA抑制が最優先事項なのか考えよう
そもそもという話ですが、CPAの抑制が本当に最優先事項なのか再考する癖をつけておくとよいです。特に代理店の運用者は、営業から降りてきたKPI達成を最優先に動く方が多いはずなので、自身の経験を踏まえてこの思考が抜けてしまいがちだと感じています。
会社経営をしていてまじまじと感じますが、事業の拡大を最優先に考えて広告運用できる人材が重宝されると確信しています。CPA抑制をすることは重要ですが、本質ではない場面もあります。
例えばスタートアップであれば、サービスがPMFしているのかまず判断したいので、CPA度外視で入札を上げてCVが取れるかスピード感を持って検証したい。一般的な中小企業でも、LTVの高いキーワードでCVを増やして、ROASを上げたい。などのシチュエーションは多いはずです。
運用しているとCPAの低いキーワードは見つかるはずです。ですがそれでたくさんCVを取ることは望まれているのかは考えたほうがよいでしょう。具体例を出すと、「商材名 × 安い」というキーワードでCPAが低く取れていたので、関連キーワードを追加して入札を強化し、大量のCVを獲得できました。
しかしLTVは従来の5分の1になりROAS・ROIが全く合っていない。CPAは低くCVも取れているのでKPIは達成できているが、肝心の売上はあまり増えておらず、的はずれな運用になっていた。なんてこともこの考えがないと起こる可能性があります。
そのためCPAを抑制したいというフレーズが出た時は「本当にそうなのか?」と少し立ち止まって考えられる視野を身につけられると、事業戦略や経営のことを相談される参謀のような運用者になれると私は思っています。
ただCPA抑制できるスキルはもちろん必要ですので、その次の段階だと考えるべきです。CPA抑制を飛ばしてよいという話ではありませんのでご注意ください。
さいごに. コンバージョンを増やしつつCPAを下げられる広告運用を目指そう
リスティング広告のCPA(コンバージョン単価)を下げること自体は難しくありません。なぜならクリック単価を落とせば下げられるからです。
クリック単価はキーワードの入札価格を下げれば抑制可能なので、誰でもできます。CPAはクリック単価(CPC) ÷ コンバージョン率(CVR)で求められるため、数式を見ると理屈がわかりやすいはずです。
しかしこの方法に頼り切りになると、コンバージョンの総数が減少し、売上を上げられる上限が頭打ちになっていくため、事業拡大の観点では良くないです。
リスティング広告のCPAが合わず大赤字、予算によるインプレッションシェアの損失率が大きいなど、下げるべきシチュエーションもあります。ただ売上を拡大していきたいのであれば、広告の品質及びコンバージョン率の改善をしてCPA抑制する意識を持ち、運用をしていくことをおすすめします。