リスティング広告の成果を改善するためにはまず分析を行い、悪化原因の要素や更によくできる要素を洗い出し、どこをテコ入れすべきか明らかにする必要があります。

例えるなら、医者が問診で治療箇所を特定するまでが分析。施術が改善と言えるでしょう。医者がいきなり施術しないのと同じように、リスティング広告もまず分析して、どこが悪いのかを明らかにしてから改善を進める必要があります。

分析と改善の関係図

分析と聞くと難しそうだと感じる方もいらっしゃるかと思いますが、ポイントを押さえれば初心者でも実施できます。結論から言えば以下3つを意識することが重要です。

ポイント説明
リスティング広告のロジックツリーを覚えて指標の関連性を理解する指標の算出式を頭に入れておく
ドリルダウンで分析していく概要から詳細へひとつずつ掘り下げながら見る
成果へのインパクトの大きいところを分析する影響度が大きいところを見る

この記事ではリスティング広告の運用を8年間300社以上行い、10人以上の運用者を教育しつつ、分析方法を伝授してきた代表の私が、リスティング広告の分析手順やコツを説明します。

リスティング広告は様々なデータを確認できますので、分析のやり方が理解できればとても運用しやすくなるはずです。現場で今も使っており、数えきれないアカウントの改善に繋げてきた分析方法をお伝えするのでぜひ参考になれば幸いです。

オンジンではこの記事を執筆した、10年近く業界歴のある代表がリスティング広告運用代行を行っています。相場価格で腕の立つ運用者に依頼できますのでお気軽にご相談ください。⇒会社サービス紹介資料を見る(無料)

1. リスティング広告の分析をする目的をまず押さえよう

まず一番大切なことですが、そもそもなぜ分析をするのか「目的」を決めましょう。初心者あるあるなのですが、分析することが目的になってしまっているとどれだけ時間を使っても何も発見が得られず、無駄な時間になってしまいます。目的がない状態で管理画面や数値を見ているのはただぼーっとしているのと変わりません。

分析は悪化や良化の要因を特定し、それを改善をするために行う行為です。そのため以下のように目的達成に直結するKPI指標を設定して、なんのために分析するか決めておくことが必要不可欠です。(運用前に決めておくことがベストですが)

  • コンバージョン(以下CV)を増やすために改善すべき対象を見つける
  • コンバージョン単価(以下CPA)を下げるために改善すべき対象を見つける

売上を増やしたいのであればCV増加が目的ですし、利益を増やしたいのであればCPA抑制が目的になるはずです。9割方どちらかでしょう。

リスティング広告の分析に限らない話ですが、手段が目的にならないよう、何事も必ずはじめに目的を決めるようにしましょう。

2. リスティング広告を分析する上で重要な3つのこと

ポイント説明
リスティング広告のロジックツリーを覚えて指標の関連性を理解する指標の算出式を頭に入れておく
ドリルダウンで分析していく概要から詳細へひとつずつ掘り下げながら見る
成果へのインパクトの大きいところを分析する影響度が大きいところを見る

次はリスティング広告の分析をする上で重要なこと(コツ)を説明します。これらを意識して分析をすれば、改善すべきボトルネックが早く把握できるはずです。

1つずつ説明してきます。

2-1. リスティング広告のロジックツリーを覚えて指標の関連性を理解する

指標数式
コンバージョンクリック数×コンバージョン率
コンバージョン単価クリック単価÷コンバージョン率
クリック数インプレッション数×クリック率

改善にも少し絡みますが、上図リスティング広告のロジックツリーを理解して、どの指標を改善すればどの指標が良化するかを頭に入れておきましょう。これが理解できていると改善対象を把握しやすくなるはずです。

例えばCVを増やすのであれば、クリック数かコンバージョンを率を上げる。CPAを抑制するのであれば、クリック単価を下げるか、コンバージョン率を上げる必要があります。

指標ごとの連動性を理解していないと、上記のような判断できず、分析が円滑に進みませんので、とても重要な概念です。必ず覚えましょう。

表でまとめていますがフローチャートの線で繋がっている指標を掛け算や割り算することで、指標を計算できます。少々ややこしいかもしれませんが、分析や改善を行う上で必須の知識ですので、繰り返しになりますがここは頑張りましょう!自分も運用を始めたての頃はここで苦労した記憶があります。

2-2. ドリルダウンで分析していく

分析する際はドリルダウンを常に意識してください。ドリルダウンとは概要から詳細へとひとつずつ掘り下げながら分析していく方法です。意識することで全体像を把握しつつ、詳細まで把握できるため、問題のボトルネックの特定が早くなり、漏れも起こりにくくなります。

リスティング広告の構成は以下のパーツで構成されているため、アカウント→キャンペーン→広告グループといった大きな構成要素から順に分析していけば、ドリルダウンに則ったやり方で分析が進みます。ぜひこの方法を実践してみてください。

パーツ(コンポーネント)主な説明
アカウント原則1つの企業につき1つ作成
キャンペーン広告予算や配信地域を設定するもの
広告グループ広告とキーワードをまとめるもの
広告広告として出す文字やリンク先を設定するもの
キーワードどんな検索語句に反応して広告を出すか設定するもの
検索語句キーワードに反応したクリックされた際に検索された語句

アカウント構成の理解が曖昧な方はリスティング広告のアカウント構成が重要な理由と具体的な作り方の記事も確認して、分析に臨みましょう。

2-3. 成果へのインパクトの大きいところを分析する

分析時は成果へのインパクト(影響)が大きいところから分析するようにしましょう。インパクトが小さいところを分析しても大きな改善に繋がらないからです。例えばCPAを抑制することが目的であれば、CPAが大きく上ぶれている配信を抑制することが重要です。

そのため上記アカウントの例であれば、赤枠で囲ったCPAが最も高いキャンペーンを停止すれば、CPAは大きく抑制できるでしょう。実際はドリルダウンで分析して、コストを投下しており、CPAの高いキーワードを特定してそれを停止するなりして、CVが極力減らないよう改善していくべきですが。

わかりやすく説明すると、このようにインパクトの大きいところを分析して抑制や強化等の改善を行います。分析していくと改善できる対象は無数に見つかるはずですが、成果への影響が大きいボトルネックを特定し、それを改善していくことが重要です。

改善できる箇所はほぼ無限にあるはずですので、限られた時間の中で効果的な改善ができるように、成果へのインパクトの大きいところから分析するようにしましょう。

リスティング広告を分析する上で重要なことの説明は以上です。

3. リスティング広告の分析方法の手順

ここからは実際のアカウントを用いてリスティング広告の分析手順を説明していきます。実際に自分でやるつもりで一つずつこの順番に見ることで、分析が疑似体験できるかと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。

  1. 分析対象指標を決める
  2. アカウント全体の数値を見比べる
  3. キャンペーンの数値を見比べる
  4. 広告グループの数値を見比べる
  5. キーワードと広告の数値を見る
  6. 検索語句の数値を見る

手順は2章で説明したことを重視しつつ、上記順番で進めていきます。自分のアカウントを分析する際もこの通り進めていただければ迷わず分析できるはずです。商材はぼかしますが、実際にこの通りお客様のアカウント分析をして、大きな改善点が見つかったとてもわかりやすい事例です。

注意点として弊社で運用する前の状態ですので誤解のないようにお願いいたします。

3-1. 分析対象指標を決める

今回の事例はCVをできるだけ減らさずにCPAを下げることが目的でした。そのため分析対象指標はCPAとします。

CPAはクリック単価÷コンバージョン率で求められますので、CPAを見つつ、いずれかもしくは両方の指標が大きく改善できるポイントを分析して特定をしていくことになります。

3-2. アカウント全体の数値を見比べる

次はアカウント全体の数値を確認します。今回のお客様はGoogleとYahoo!で配信していたので、それぞれ数値を見比べます。どちらかだけであればこの工程は飛ばしてください。

今回はGoogleの方がCVが6倍以上多い状態でした。よってGoogleは改善できればCPAの抑制伸びしろが多いと判断できますので、Googleを分析していくこととします。

管理画面でぱっと見ても良いですが、上記のようにエクセルやスプレッドシートで表にすると違いがわかりやすいので、ガッツリ分析する際はぜひこのようにまとめながら進めてください。

3-3. キャンペーンの数値を見比べる

Google広告のキャンペーンの数値を見比べていきます。すると、全体のコストを10分の1程度を使用しているが、明らかにCPAが高いキャンペーンを見つけました。分析当時は稼働していたのですが、現在はCV獲得に繋がらない不要なキャンペーンだと配信して停止しています。

なぜここまでCPAが高いのか、どんな方向性で改善していけばよいのかを明らかにするため、ドリルダウンしてこのキャンペーンの広告グループを見ていきましょう。

3-4. 広告グループの数値を見比べる

広告グループは5つ存在していますが、稼働していたのは1つだけでした。そのためこの広告グループのキーワードや広告をドリルダウンして見ていきます。

もし複数の広告グループが動いている場合は、キャンペーンと同じようにコンバージョン率やクリック単価、コストを見てインパクトの大きいものを深掘っていきます。

3-5. キーワードと広告の数値を見る

キーワードを見ていくと、これがボトルネックだろうとほぼ確信できるキーワードを発見しました。約60%のコストをこのキーワードだけで配信していますが、CPAは¥48,712と目標値から逆算するとめちゃくちゃ高いです。ただしキーワードだけ見るとそこまで商材とズレはなさそうに見えます。

その他キーワードもCPAが低いとは言えないので、この時点でこのキャンペーンを停止すべきだとほぼ結論づけたのですが、せっかくなので広告も見ていきます。

広告ごとCPAの優劣はありますが、アセットを見る限り商材と大きくずれた訴求はされていませんでした。そのため広告を改善しても大きくCPAを抑制することはできないと判断しました。

続いて検索語句を見ていきます。

3-6. 検索語句の数値を見る

CPAが高い原因が特定できました。商材とはほぼ関連のない検索語句で、キャンペーンの予算の66%を使ってしまっていたことが要因でした。キーワードが部分一致で登録されていたので、拡張され商材と関連の薄い語句でクリックがされてしまっています。

よってこの分析では、CPA改善でまずやるべきはこのキャンペーンの停止と結論づけました。枠で囲った検索語句の除外やキーワード停止でも大きくCPAは抑制できますが、他のキーワードで流入している語句も関連性が高いとは言えなかったため、キャンペーン自体が不要と判断しています。

以上で分析は終了です。

ここからは改善の話になりますが、このキャンペーンは1ヶ月で¥1,301,526を使用していたため、停止してCPAの低い伸びしろのあるキャンペーンで余剰予算を使うことでCPAを抑制しつつ、CVを増やすことに成功しました。

このように以下3点を守って分析すれば、早く確実にボトルネックを見つけられます。今回はかなりわかりやすい事例だったということもあり、原因を特定するのにかかった時間は2分以下です。ぜひこの手順で自分のアカウントも分析してみてください。

  • リスティング広告の指標の関連性を理解し、分析対象を特定する
  • ドリルダウンで分析
  • 成果へのインパクトの大きいところを分析

分析後の改善方法はもう迷わない!リスティング広告の目的別改善手順と注意すべきことで説明していますので、こちらも合わせてご覧ください。

分析手順の説明は以上です。

改善をする必要ができるだけないように、リスティング広告の戦略をしっかり立てておきましょう。

今回の事例ではCPA抑制に大きく繋がるポイントを発見できましたが、そもそもこのような悪化要因を作らないことが重要です。そのために大切になるのがリスティング広告の戦略です。簡単に言えば「どこに予算を集中させてどんな価値を伝えるかを選択して実行すること」です。

これを曖昧にしてアカウントを作り配信を開始すると、運用を開始してもすぐ改善をしなければならない状態になってしまう恐れがあります。まだ配信していない方はぜひリスティング広告の戦略の立て方と実行する上で重要なことのページを見て、戦略の重要性や立て方を理解しておきましょう。

4. リスティング広告の分析を細かくする際に活用すべき2つのエクセル機能

次はリスティング広告のデータを細かく分析する際にぜひ使ってほしいエクセル機能を紹介します。エクセルと聞くとアレルギーが出る方もいらっしゃると思いますが、精密に分析をするのであれば、エクセルでデータ集計するスキルは必須だと私は思っています。ですのでしっかり運用していきたいのであれば必ず覚えましょう!

個人的によく使う機能を2つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。スプレッドシートにも同様の機能があるので、こちらでもOKです。無料で使えるのでパソコンにエクセルが入っていない方は、スプレッドシートを使いましょう。

4-1. ピボットテーブル

ピボットテーブルとは簡単に言うと、膨大なデータを元に自分が見たい項目を軸にした集計表を作成できる機能です。関数を使わずに利用できるためエクセルが苦手な方でも使いやすい機能だと思います。私は分析時によく使い、使うハードルは低めなのでまずはこれから覚えるとよいです。

使うシチュエーションは様々ですが、よく利用するのが検索語句のデータ集計です。

お客様のアカウントを分析させていただく際、キャンペーンや広告グループが乱立していると、検索語句は同一でも上図のように複数のコンポーネントに反応してしまっており、管理画面では語句がダブって表示されていることがあります。こうなると正確に検索語句のデータ集計ができないのでピボットテーブルを使います。

ピボットテーブルで集計すると、このように検索語句のダブりがなくなり正確にCV数やCPAが把握できます。検索語句の集計以外でも自分が決めた指標を軸にデータ集計ができるようになるので、ぜひ使い方を覚えましょう。下記ページの使い方解説がわかりやすかったのでぜひ参考にしてみてください。

参考:ピボットテーブルの使い方!【図解付き】基本から応用まで分かりやすく解説

4-2. 関数

エクセルの関数とは、定型の計算を行うための数式のことです。使えないとデータ集計ができないことも多いので必須で覚えましょう。3章で取り上げた事例並に際立った優劣が出ている時は、管理画面だけ見て分析が完結しますが、そうではない場合はデータをダウンロードして集計比較する必要があるはずです。

自分がリスティング広告のデータ集計でよく使うものをまとめましたので、時間に余裕があれば適当なデータを使って使い方を覚えてみてください。

関数概要
SUM数値の合計を求める
AVERAGE数値の平均値を求める
SUMIFS複数の条件を指定して数値を合計する
COUNTIFS複数の範囲のセルに条件を適用して、すべての条件が満たされた回数をカウントする
SUBTOTAL集計の種類を指定して、さまざまな集計値を求める

活用すべきエクセル機能の説明は以上です。

5. リスティング広告の分析をする際に知っておくと役立つ4つこと

最後に細かい話も多いですが、リスティング広告の分析をする際に知っておくと役立つことを紹介します。

5-1. データが少ない状態での分析は精度が低いのでおすすめしない

配信して2日しか経過しておらず、クリックも10回しかされていない状態で分析するなど、蓄積されているデータが少ない状態での分析は結果があてにならず、誤った改善施策を実施してしまう恐れがあります。そのため、ある程度データが蓄積された状態で分析するようにしましょう。

データ量は多いに越したことはないですが、少なくとも100クリック以上はされた状態で分析することをおすすめします。これでも非常に少ないので、状況にもよりますが1,000は欲しいです。

ただクリックされている検索語句が明らかにニーズズレを起こしているなど、はっきりと悪い状態だと認識できればデータが少なくても分析して改善をすべきです。

5-2. 配信エリア、時間やユーザー属性の分析は後回しにする

リスティング広告では、配信したエリアや時間、性別、年代等のデータも分析できますが、これらは3章で説明した項目を全て分析し終わってから見るようにしましょう。これらがボトルネックになっていることもありますが、確率的に少ないはずなので見る優先順位は低めで問題ないからです。

インパクトの少ない箇所を見ても大きな改善には繋がりませんので、分析する優先順位を意識するようにしましょう。

5-3. エクセルで分析できないのに分析ツールを利用するのは非推奨

リスティング広告の分析を簡略化してくれるツールは多々ありますが、私ははじめからツールに頼るのはおすすめしません。まずエクセルで集計できるようになるのを目指すべきです。ツールありきで分析をするようになると、改善の幅が狭くなってしまいます。

正直エクセルで集計して分析するのは面倒です。ただ分析で大切なことを学ぶいい機会になると自身の経験から感じます。関数を組み替えたりと自由にカスタマイズできるので、どのように集計したら望むデータが抽出でき、改善できるのかを考える修行になります。

ツールは確かに便利ですが、あくまで作業を効率化するために使うものだと私は思っています。そのためまずはエクセルで集計分析してみて、ある程度できるようになったら、作業を効率化する名目でツール導入を検討することをおすすめします。

5-4. 管理画面の数値分析や改善だけでは限界がある

今回ご紹介した分析はあくまでリスティング広告の管理画面上でできる内容です。数をこなしていくとわかるはずですが、管理画面外にも目を向けないと抜本的な改善ができない事象にも遭遇するはずです。

例えば、CVRが非常に悪化していることがわかったが、データを見ても全く原因がわからなかったとします。そこで管理画面の外に目を向けてみると、競合がリスティング広告の配信を開始しており、自社より優れた訴求内容で被せてきて、ユーザーが競合に流れてしまっていたということもあるでしょう。

管理画面でオークション分析を見れば競合が増えたことはわかりますが、訴求内容まではわかりませんので、外も見ることが重要です。

基本は管理画面の数値を見て分析をすべきですが、外に目を向けないと解決できないことも多いです。広告運用をしていると視野が狭くなりがちですので、分析や改善できることは画面外にもあることを認識しておきましょう。

まとめ

リスティング広告の成果を改善するためにはまず分析を行い、悪化原因の要素や更によくできる要素を洗い出し、どこをテコ入れすべきか明らかにする必要があります。

下記3点を意識しつつ、ご紹介した手順で分析をしていけば改善対象が明らかになるはずですので、まずはこの通りに進めてみてください。

  • リスティング広告の指標の関連性を理解し、分析対象を特定する
  • ドリルダウンで分析
  • 成果へのインパクトの大きいところを分析

分析方法に正解はありませんので、数をこなしつつ自分流のやり方を見つけられると運用も楽しくなるはずです。