リスティング広告の運用とは一般的な適宜でいうと、目的を達成するためにリスティング広告の管理画面でやる調整のことです。

広告を配信する目的の大半は「売上を上げる」か「利益を確保する」のはずですので、「コンバージョン数を増やす」もしくは「利益が出るコンバージョン単価以下にする」ためのリスティング広告の調整が運用のメインといえるでしょう。

予算の管理売上を上げる利益を確保する
運用でやることコスト投下量を調整するCV数を増やす調整利益が出るCPA以下にする調整
目的別のリスティング広告運用でやる調整

リスティング広告は運用が正しくできるかどうかで目的達成できるか決まるため、絶対にないがしろにしてはいけません。

例えるなら資産運用と同じように、目標値に対しての進捗度合いを日々確認しながら、儲かる対象に予算を適切に配分しながら配信していきます。やることは資産運用と非常に似ていますので、同じように考えるとわかりやすいかと思います。

この記事では、業界歴8年の筆者がリスティング広告運用でやるべきことを説明します。ではまず、冒頭で紹介したリスティング広告の運用そのものについて初歩から詳しく説明していきます。

1. リスティング広告の運用とは

リスティング広告の運用とは一言でいうと、目的を達成するためにリスティング広告の管理画面でやる調整のことです。

調整できる箇所は挙げればきりがないですが、成果に関わる箇所で特に大事なのが以下3つです。

  • キーワード
  • 広告文
  • 予算

これらで成果が決まると言っても過言ではありませんので、運用ではこれらを主に調整していきます。詳しくは後述しますが、これから配信を始める初心者の方でも必ず上記は日々確認して調整をするようにしてください。

2.リスティング広告には運用が欠かせない理由

次はなぜリスティング広告は運用が必要なのかを説明します。やるべき理由が不明瞭だと運用がいい加減になる可能性があるため、しっかり理解した上でどのようなことを実施するのかを理解していきましょう。

2-1. 調整しながら配信する広告だから

リスティング広告は「運用型広告」と呼ばれる種類の広告で、そもそも配信しながら状況を見て運用という調整していくものです。皆さんに馴染みのあるテレビCMやチラシ、DMといった広告は出したら修正することはできませんが、リスティング広告はWeb広告なので、配信した後もリアルタイムで調整が可能になっています。

大きな成果を出すためには運用は必須ですので、配信したら終わり。と思われているのであれば考えを切り替えましょう。

2-2. 状況に合わせた調整が必要だから

ユーザーの動向や世の中の流れに対応して運用調整できると広告の費用対効果は高くなるため、やるべきです。

通常時の対応は以下の太字事象が例です。よい事象であれば広告出稿量を伸ばす調整をするべきですし、悪ければ抑制もしくは改善する対応を行います。

細字はスポット的に発生するものですが、このような需要が高くなることが想定される場合は予め調整しておくなどの対応も運用では求められます。

事象運用対応
特定のキーワードからCVがよく発生する関連語句を追加する、広告文に組み込む
特定のキーワードのCPAが高いキーワード停止、入札価格の抑制、除外
クリック率が低い広告文によくクリックされている語句を追加
季節が変わり需要が増えた日予算を上げる、キーワード追加、入札の強化
テレビで商品が取り上げられ需要が急増日予算を上げる

2-3. 配信コストを広告予算内に収めるため

リスティング広告は、配信コストを予算内に収めるためにも運用(予算管理)は必要になってきます。ただこれは難しくなく、1日単位で配信したいおおよその予算を入力しておくだけです。この欄に用意している広告費以上の予算を設定してしまうと、金額超過してしまいますので注意してください。

反対に配信される予算が少ない場合は配信対象を広げる設定を行います。

3. 目的別リスティング広告の運用でやるべき3つのこと

リスティング広告の運用やるべきこと

それではリスティング広告の運用でやるべきことを説明していきます。内容は目的によって異なりますので、ご自身がリスティング広告に求めることと照らしながら読み進めてください。

目的運用内容
どんな目的でも必須広告予算の投下量を適切に調整
売上を上げる目標CV数に到達できるように調整
利益を確保する利益が出るCPA以下になるよう調整

ではまず基本の予算管理から説明していきます。

目的(目標値)が決まっていない場合ははじめに必ず決めよう

リスティング広告は目指すゴールが決まっていないと、何をどのように運用したらいいかが定まりません。そのため配信開始前に売上を上げる、利益を出すどちらが目的なのかをはっきりさせておきましょう。

3-1. どんな目的でも必須な予算管理

予算管理は最低でも月のはじめに必ず行いましょう。やり方は「キャンペーンの予算」に月で使う広告費をその月の日数で割り算した額を入力するだけです。Google広告、Yahoo!広告両方設定方法は同じです。下記キャプチャの赤枠箇所の予算をクリックして編集しましょう。

Google広告の日予算
Google広告の予算設定箇所
Yahoo!広告のキャンペーン予算設定
Yahoo!広告の予算設定箇所

例えば11月に60万円配信する場合は 60万÷30=2万 となるため、全てのキャンペーン予算の合計が2万円になるように赤枠の予算を設定します。繰り返しになりますが、この欄に用意している以上の広告予算を設定してしまうと、超過してしまいますので注意してください。

反対に入札価格が低すぎたり、配信エリアが狭かったりすると予算が使えないという事象も発生します。この場合は入札価格を上げたり、エリアを広げたりなどリーチ範囲を拡大する必要があります。

そのため可能であれば毎日一度は管理画面を確認して、コンバージョンなどのパフォーマンスと合わせて配信予算も確認するようにしましょう。

1ヶ月で最大請求される広告費は1日の予算の30.4倍まで

リスティング広告は仕様上、日単位だと1日の日予算の2倍までの広告費を最大請求されますが、月では1日の日予算の30.4倍までしか請求されませんのでご安心ください。たとえば、1日の予算が 1,000円に設定されている場合、1ヶ月の請求金額の上限は 1,000円 × 30.4=30,400円となります。下記のように日々使われる予算は上下しながら最終的には日予算の30日分程度に着地します。

リスティング広告の予算のgraf

管理画面のコスト数値を見ると、驚くほど配信されていることがありますが、仮に30.4倍以上の予算が使われても差額分は請求されませんのでご安心ください。仕様を確認したい場合はGoogle広告ヘルプの費用の上限についてをご覧ください。

3-2. 売上増加が目的の場合

リスティング広告のコンバージョン数を改善する図

売上を重視する場合は、決めた目標CV数に到達できるように運用していきます。例えば価格が1万円の商品を販売するとして、リスティングで売上を50万円増やすとします。この場合は月間でCV数が50件取れるように調整します。

調整で行うことは、以下どちらかに起因するものになります。コンバージョンはクリック数 ✕ コンバージョン率で計算できるため、どちらかもしくは両方を改善することで増やせます。

  • クリック数を増やす
  • コンバージョン率を上げる

具体例を挙げると、月間CV目標50件で月額予算は50万円であればクリック数は5,000。つまりクリック単価を100円程度。コンバージョン率は1%で着地するように調整をかけていきます。一番簡単な方法は予算を上げてクリック数を増やす方法ですが、費用対効果は悪化してしまいますので、予算内でこれらを改善できる方法をまず考えるとよいでしょう。

運用でやるべきことは下記の記事で解説していますので、詳細はこちらをご覧ください。
もう迷わない!リスティング広告の目的別改善手順と注意すべきこと

3-3. 利益確保が目的の場合

リスティング広告のコンバージョン単価の改善図

利益を重視する場合は、利益の出るコンバージョン単価以下になるように運用していきます。例えば売れると利益が1万円出る商品をリスティング広告で配信する場合は、コンバージョン単価は1万以下になるように調整していきます。

注意点として、利益額の目標を決めている場合は、3-2と同じコンバージョン数を追うことになります。仮に上記条件で月50万円の利益を目指す場合は、予算50万円ならCV100件が目標といった感じです。

調整するために行うことは、以下どちらかに起因するものになります。コンバージョン単価はクリック単価÷コンバージョン率で計算できるため、どちらかを改善することで下げられます。

  • コンバージョン率を上げる
  • クリック単価を下げる

具体例を挙げると、月間CV目標100件。クリック単価が100円程度であればコンバージョン率が1%以上になるように調整をかけるか、クリック単価を下げます。注意点としてクリック単価を下げればすぐ改善に繋がりやすいですが、クリック数が減少しコンバージョン数が落ち込む場合があります。

よって広告をかけた割に全然利益が増えない….。といったことになる可能性があります。これでは本末転倒ですので、まずはコンバージョンの改善を重視して行うのをおすすめします。こちらも運用でやるべきことは下記の記事で解説していますので、詳細はこちらをご覧ください。
もう迷わない!リスティング広告の目的別改善手順と注意すべきこと

4. リスティング広告を運用する2つの方法

ここからはリスティング広告運用をする方法を説明します。結論、自社で運用するか代行会社(代理店)に任せるの2択があります。それぞれ長所短所があるため、比較しながらどうやって運用するかを決定しましょう。

ただリスティング広告を運用したことがないのであれば、ポジショントーク抜きにして基本代理店に任せるのが基本推奨です。運用代行手数料がかかりますが、優れた運用者に任せられればそれ以上のリターンが得られることが多いからです。

詳しくは別の記事で解説しますが、要点だけ抜粋して説明をしていきます。

4-1. 自社での運用(インハウス)

自社に運用経験者やWebマーケティングが得意な人材がいらっしゃれば一番おすすめの方法です。自社の人間以上にお客様のニーズを理解している運用者はいないと私は考えているため、ベストは自社運用と断言できます。

ただ適任の人材がいないのであれば代理店へ任せましょう。広告運用は覚えることが多く、丁寧にやると時間もかかるので、無理して自社で運用する必要はありません代理店に任せる手数料より自社の人件費の方が多くかかる場合も少なくないはずです。

それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリットデメリット
運用代行手数料がかからない経験がないと成果が出ないリスクが高い
自社にナレッジが貯まるスキル習得までの人件費や時間がかかる
すぐに施策の実施や修正ができる運用に日々時間が取られる
細かい運用がしやすい最新機能を定期的に調べる必要がある
自社運用のメリデメ

4-2. 代行会社での運用

自社に運用経験者やWebに精通した人材がいない場合は、代行会社での運用がおすすめです。かかる代行手数料の相場は月額広告費の20%です。もっと安い会社もありますが、相場はこれくらいだと考えていただいてOKです。

それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリットデメリット
経験者が運用するので成果が出やすい運用代行手数料がかかる
最新機能を使った運用をしてくれる顧客ニーズの理解が薄い運用になる可能性がある
運用の手間、人件費がかからない細かい運用ができない恐れがある
広告費の建て替えをしてくれる施策実施に時間を要する場合がある
代行会社運用のメリデメ

5. リスティング広告の運用で使えるおすすめツール

次はリスティング広告の運用が捗るおすすめのツールをご紹介します。なお紹介するツールはすべて運用歴8年の自分が実際に使って”本当に便利だ”と感じたものだけです。ですのである程度信用に値する情報かと思います。

注意点としてはツールの主な利用目的は工数を削減です。そのため、使えば全く運用の知識がなくてもガンガンコンバージョンが取れるようになる!といった魔法の杖ではありませんのでお気をつけください。

私がおすすめのリスティング広告のツールは以下です。無料で使えるものを省くと、広告運用初心者に一番オススメなのはShirofuneです。

ツール名特徴
Google広告、Yahoo!広告エディター入稿が早く行える
キーワードプランナーキーワードの検索ボリュームがわかる
ラッコキーワード関連キーワードを調べられる
Shirofune広告運用とレポートを自動化できる
Lisket安く簡単にレポートが自動で作れる
アドレポ自分好みのレポートが自動で作れる
アドブースト(無料機能)入稿を更に早く行える
ahrefs配信キーワードの探査ができる
Googleトレンドキーワードの需要チェックができる

運用歴8年の代表が教えるリスティング広告のおすすめツールで詳細は説明していますので、ぜひご覧ください。

6. リスティング広告運用の腕を上げる方法やコツ

最後に僭越ですが、リスティング広告運用の腕を上げる方法を紹介します。これまで私は8年間で100社以上リスティング広告の運用代行をさせていただきながら、自身も成長しつつ運用者の教育を行ってきました。そして今では運用代行を営む代理店を経営する立場になりました。

ここまでの過程で感じたことを踏まえつつ、自分がやってきたことや気をつけたことを紹介しますので、広告運用の腕を高めていきたいと考えている方はぜひ参考にして、上から順番に取り組んでみてください。

6-1. リスティング広告に関する書籍を読む

はじめにリスティング広告の運用の基本や大切なことを書籍で網羅的に学びましょう。ヘルプページ等で断片的に学んでも点と点がつながらずよくわからないかと思いますので、まずは本で全体像を掴むのがおすすすめです。

本は初心者向けかつ発売日が新しいものを選んでください。リスティング広告はアップデートが頻繁に行われるため、古い本だと現在と仕様が違う可能性が高いためです。

おすすめの書籍は別の記事で紹介します。

6-2. 管理画面の操作に慣れる

本を読んだらリスティング広告の管理画面を隅から隅までさわって、操作方法を理解していきましょう。実際に配信をしなくても画面は操作できます。車の運転と同じで、知識があっても画面の操作ができないことには運用はできません。

もし何ができるかよくわからない画面が表示されたらググって理解しましょう。リスティング広告はアップデートが激しいので、運用を熟知するにはググって解決する力は必須です。

はじめは操作はおろか言葉も横文字ばかりで何を言っているかわからないかと思いますが、1つずつ意味を調べながら少しずつ学んでいきましょう。私もはじめはしーぴーえー?コンピューターのこと??というくらい訳がわからなかったですね…。

6-3. リスティング広告ブログと媒体ヘルプページを読む

画面の操作の習得と平行して、機能や仕様の理解を深めていきましょう。おすすめは媒体ヘルプページを読むことですが、説明がわかりづらい場合は、弊社のようなリスティング広告ブログと合わせて見るとわかりやすいはずです。

媒体ヘルプページは基本常に最新情報に更新されており、誤りもないので最も信頼できます。そのため理解に支障がないのであれば、ヘルプだけで学習することをおすすめします。文章が固くわかりづらいと感じるのであればブログと併用しましょう。ただし情報が古かったり誤りがある場合もあるので注意が必要です。

6-4. 配信して失敗を繰り返しながら学ぶ

機能がある程度理解できたら配信をしてみましょう。いつまでも座学だけしていても運用は上手くなりませんので…。車の運転と同じです。

ここでなにかしらミスをしてしまうかと思いますが、織り込んでしょうがないと割り切ったほうがいいです。運用で失敗したことのない人なんて絶対いません。私が見てきた限りでは、基本がわかったら数をこなしつつ失敗しながら慣れる方が上達は早い印象です。

基本的な運用方法はこの記事で紹介していますので、参考にしながら進めてみてください。目的を決めてそれを達成するために必死にもがいていれば自然と運用できるようになっているはずです。ちょっとしんどいですが、こればかりは慣れです!

設定ができるようになって運用できた気にならないように注意

ある程度経験を積むと、やりたいように設定できて運用できるような気分になるはずですが、ここで気を抜いてはいけません。なぜなら、リスティング広告の設定ができるだけの運用者に価値はそれほどないからです。下図をご覧ください。設定だけできる状態は下から2つ目のtier1なのでレベルは低いです。

引用;運用型広告運用者のための抽象度ピラミッド

これは業界トップのアナグラム株式会社さんが作られた、運用型広告運用者の抽象度ピラミッドです。簡単に言うと運用者のレベル表です。上にいけばいくほど抽象度の高い問題が解決できる優れた運用者であると定義されています。

優れた運用者は設定はもちろん、決められたKPIを達成だけではなく、目的を見直して正しいKPI設定する。Web広告を含めたマーケティング戦略の設計等ができる人材です。そのためtier5を目指すのであれば、運用だけでなく他の領域もカバーできる能力が必要になります。(私も長年運用をしてきてこの内容に同意です)

そのため弊社は広告配信だけでなく、目的目標や戦略設計など運用以外の領域から入り、必要であれサイトや値付けなどお客様のビジネス拡大に貢献するポイントに意見させていただくこともございます。(極力外部要因にはしたくないので、リスティング広告だけでなんとかする前提はあります)

さいごに. リスティング広告の設定だけをするのは運用とはいえない

リスティング広告の運用とは目的を達成するためにリスティング広告の管理画面でやる調整のことです。と冒頭で一般的な定義を記載しましたが、実際は運用者のレベルによって定義は異なります。

リスティング広告の運用をしたことのない方であれば、設定して配信することを運用と呼ぶかもしれませんが、弊社の見解では、リスティング広告の関連するビジネスの発展に繋がる様々な改善も含め運用と定義しています。

そのため、ただ正しく設定して配信するというのは運用のスタートラインです。まずはここを目指しながら戦略立案やWeb広告以外のマーケティング戦略など広い領域がカバーできるように、広告以外の知見を深めながら目的達成に全力を注いでいきましょう。